何だかイライラする出来事があったり、ムカムカしている時にはコレでも見てスッキリして寝るに限ります。
アーノルド・シュワルツェネッガー主演「コマンドー」
公開されてから30年以上経過した古い作品ですし、なんたら賞とかの権威がある作品でもありません。
はっきり言ってしまえば、筋骨隆々の元軍人が拉致された娘を助ける為に大暴れする…それだけの映画です。
深いテーマだとか、高尚なメッセージだとか、お仕着せの感動とか…そういうのも一切ありません。
でも、未だ「午後のロードショー」等で放送されるとちょっとした話題になる程度には根強い人気を持っている映画。
その理由の一つは、こんな映画(失礼)なのに実にいい吹き替えがあてられている、というモノ。
巷に蔓延る自称映画通などに言わせると、映画を吹き替えで見るのは邪道なんでしょうが、世の中には絶対に字幕ではなく吹き替えで見るべき映画があるんですよ。例えば「プロジェクトA」とか「酔拳」「ポリスストーリー 香港国際警察」といった往年のジャッキー・チェンの映画は、石丸博也さんや水島裕さんの声あったてこそでしょうし、「ダーティハリー」もクリント・イーストウッド氏の声も渋くていいんだけど、やっぱり山田康雄さんの声で
「泣けるぜ…」
の方が何だかカッコよく見えてしまうんです。この「コマンドー」もそういう吹き替えで見てこその一本。実はこの「コマンドー」には吹き替えも2種類あって、それぞれメイトリックス大佐をお馴染み玄田哲章さんが演じたものと、屋良有作さんが演じたものがあるんですが、ワタクシとしては断然玄田版をオススメします。何せ玄田さんはシュワちゃん公認の専属吹き替え声優。マッチョで頼りがいがありそうなその声と演技から、「トランスフォーマー」では日本語吹き替え版を見たハリウッドのプロデューサーが、「玄田は英語が出来るのか?ハリウッドで任せたい仕事がある」とまで言わしめた人です。
玄田さんを筆頭に吹き替え陣の名演も然ることながら、吹き替え版の翻訳の素晴らしさ…これに尽きます。何といいますか、作中のイメージにマッチした軽口的な台詞回しや掛け合いが抜群に楽しく、カッコ良いんです。
「ジェニー、お父さんと大事な話があるんだ」「そう、令状はあるの?」
「無事取り戻したければ俺たちに協力しろ。OK?」「OK!!(ズドンッ)」
「一番気に入ってるのは」「何です?」「値段だ」
「ベネット!殺されたんじゃ…」「残念だったな。トリックだよ」
「アリアスにいくら貰った」「10万ドルポンとくれたぜ」
「頼みがあるんだが、連れを起こさないでくれ。死ぬほど疲れてる」
「全警備員へ。3階で非常事態だ。容疑者は男性、190cm、髪は茶、筋肉もりもりマッチョマンの変態だ」
「お前は最後に殺すと約束したな」「あれは嘘だ」
「どこで使い方を習った?」「説明書を読んだのよ」
「こんなの飛行機じゃない!羽根のついたカヌーよ!」「だったら漕げばいいだろ!」
「ベネット君、私の兵士たちはみな愛国者だ」「ただのカカシですな」
「野郎ぶっ殺してやらぁ!!」
とまぁ、台詞だけでそのシーンを完全に思い出せてしまう様な名シーン続出…これも、翻訳を担当した平田勝茂氏のセンスの賜物と言えましょうな。「コマンドー」の人気が今日まで維持されている理由の一つですよ、間違いなく。
余談ですが、本作でベネットを演じた人…この人、コレまたカルト的な人気を今なお維持している「マッドマックス2」でヒューマンガス配下のモヒカン頭の暴れん坊・ウェズを演じた人。つまりは「北斗の拳」の雑魚モヒカンのモデルと言える人でもある訳です。クック役の人は「プレデター」ではシュワちゃん演じるダッチ・シェイファー少佐の部下として共演。安全髭剃り持ってる人、と言えば分かる人には分かるかな。
更に余談ですが、ハマーってやたらデカいアメ車のRV車がありますよね?アレ、元々は米軍のハンヴィーという軍用車の民生仕様、というのは知っている方も多いかも知れませんが、実はこのハンヴィーを民生仕様にして売って欲しい、と要望したのはシュワちゃんなんですよ。シュワちゃんはジープやオートバイ好きとしても知られていて、他にも兵役時代に戦車兵だった事からM47パットンも購入し、所有しているんだそうな。