「機動戦士ガンダム」と言えば…(ちょっと追記)

  • 2019.06.03 Monday
  • 00:04

「機動戦士ガンダム」…それも初代に限定して「好きなキャラクターは?」と聞くと、人気なのはやっぱり主人公のアムロや「赤い彗星」のシャア、「めぐりあい宇宙」のシャワーシーンでは劇場公開当時フラッシュを焚いて撮影した不届き者がいるというセイラさん辺りでしょうか?…もしくは渋いオヤジの筆頭であるランバ・ラルや後のアムロやシャアに多大な影響を及ぼしたララァ…こんな感じで初代「ガンダム」の人気キャラクターは枚挙にいとまがない訳ですが、私にとってはやっぱり彼なのです。

 

「機動戦士ガンダム」より カイ・シデン

 

ご存知、サイド7の民間人でホワイトベースではガンキャノンのパイロットとして一年戦争を戦い抜いたカイ・シデンです。

小説版では終盤でアムロが戦死してしまう事もあり、最終的にはニュータイプとして覚醒した彼が主人公めいた活躍や発言をする事も一部では有名なんですが、私が好きなのはアニメ版の「軟弱者」なカイなんです。

 

物語の冒頭、サイド7でジオンの襲撃に巻き込まれた民間人の中でも、嬉々として…と書くと語弊はありますが、生き残る為という理由はあれど、その裏にはある種の自己顕示欲に駆られていた部分が見えなくもなかった序盤のアムロとは別ベクトルで、軍人であるブライトやリュウに反発していたキャラクターがカイというキャラクター。大型特殊の免許を所持していて適正も認められた為にガンキャノンのパイロットに抜擢されますが、パイロットとして戦う理由も基本は生き延びる為ではありますが、やや後ろ向きで打算が大きかったキャラクターですね。

 

カイには身勝手で皮肉屋な男…という描写があり、それを理由にセイラさんからビンタされている訳で…お世辞にも育ちが良いタイプのキャラクターでは無かったのですが、コレは当時…ありがちな主人公サイドの2番手キャラクターという部分に所以する部分が強い気がします。「ゲッターロボ」における神隼人、「コン・バトラーV」における浪花十三みたいなモン…というのはあったんじゃないかと。ただ彼の場合特筆すべきは戦いを、戦争を嫌い、軍属になる事を嫌って一度はホワイトベースを降りている…という点でしょうか。

 

ニュータイプ云々というのは個人的にはどうでもいい部分…というか、正直「ガンダム」のニュータイプ論は好きではないんですが、それはともかく戦いの才能に富み、戦争に邁進しているアムロより、戦争を嫌い、軍属になる事に強い抵抗感を持つカイの方に感情移入しやすい部分があったんですね。この原因は、やっぱり「ガンダム」が異星人や異形の存在ではなく、まがりなりにも人間同士の戦い「戦争」を描いていたからかも知れません。

 

 

そんな彼の転機は第28話「太平洋、血に染めて」ですね。ホワイトベースを降りたカイは幼い弟妹を食わせるためにジオンのスパイをしている少女・ミハルと出会います。一旦はホワイトベースを降りるも、ホワイトベースの…仲間の窮地にいてもたってもいられず結局戦う事を選ぶカイですが、ココでホワイトベースに潜入したミハルを匿ってしまいます。この辺はカイというキャラクターの「軟弱者」たる魅力が存分に出ていて、皮肉屋を気取っているが根っこの部分ではお人よし、仲間を見捨てられない。それでいて嘘だとは分かっているのにミハルに「あんたに会いに来た」と言われて内心喜んでしまう…そして出撃しミハルは自分を助けるために死んでしまう…このミハルとの別れを通じてカイは大きく成長します。このエピソードが、後のジャブロー戦での出撃時の名台詞

 

「ミハル、俺はもう悲しまないぜ。お前みたいな娘を増やさないために、ジオンを叩く…徹底的にな!」

 

に繋がる訳ですが、このシーン、劇場版「哀戦士」だと主題歌のイントロが重なる上に古川さんの熱演もあって凄くカッコいいシーンになっているんですね、ええ。実質、「哀戦士」はカイが主人公だとすら思うんですよ、私は。

 

余談ですが、この出撃前、軍の施設に入れられそうになるのを拒んでフラウ・ボウの説得も聞かないカツ、レツ、キッカの3人をカイがフォローし、担当官を説得して結果3人がホワイトベースに残れる事になる…というシーンがあるんですが、このシーンをことぶきつかささんの「デイアフタートゥモロー カイ・シデンのメモリー」という漫画でネタにされており、カイがミハルの弟妹・ジルとミリーを引き合いにこの件を振り返り心情を吐露するシーンがあるんですが、コレにはなるほどそう来ますか!と感心してしまいました。この「カイ・シデンのメモリー」はサイド3で開かれるホワイトベース展を軸に、カイが当時を回想していくという初代ファン、カイファン必見の漫画です。全2巻でキッチリ完結しているので是非。ちなみに「カイ・シデンのレポート」(こちらも全2巻)というのもあるんですが、コッチは「劇場版Z」が軸なので初代ファンはスルーしても良いかと。まぁ、「劇場版Z」が好きならアリかも知れませんが。

 

それと、カイというキャラクターはニュータイプ云々とは違う形の高い洞察力の持ち主だという事にも触れておきましょう。序盤にブライトたちに食って掛かる場面が多いのもそうですが、何気に核心を突いた台詞を吐く事が少なくないんです。件のミハルにしてもすぐにジオンのスパイとハッキリ断定出来ていたかは分かりませんが、何らかの後ろめたい商売をしていて目的があって自分に近づいてきた事を察していますし、ア・バオア・クーでの最終決戦前のブリーフィングでも、アムロの「作戦は成功する」という発言を、作戦前にナーバスになっている仲間への方便であると見抜いたりしています。更には舞台を「Z」に移しても、一目見ただけでクワトロがシャアである事を看破していたりもします。カイの場合の洞察力と言うのはニュータイプ的な突然変異の賜物とかではなく、自身の経験なとから得た「物事の本質を見抜く目」…そういう意味で言えば、カイをニュータイプとして覚醒させてしまった小説版よりも、カイのニュータイプとしての素養を殆ど描かなかったアニメ版の描写の方が彼のキャラクターを引き立てていると思います。

 

カイはアムロの影に隠れがちながらも多大な戦果を挙げているキャラクターではあるんですが、次々後付けされていくOVAやらゲームの影響でパイロットとしてのイメージは割と薄くなってしまっている気がします。更に、一年戦争後は軍を離れてジャーナリストになっている、という事から初代を扱った「ガンダムゲー」はともかく、「スパロボ」等ではジャーナリストとして協力者、というポジションになる事が多く、パイロットとしては割と不遇ですね。愛機のガンキャノンも後続シリーズ作品の登場に合わせて序盤は何とか…という性能になるパターンが多いので同様ですが。でも近接戦闘用の武器がバルカンしかなく機動性が低め、という欠点はありますが、厚い装甲に守られた堅牢なボディに連射可能な大口径実弾砲、精度の高いビームライフルと…射撃戦に限れば一年戦争でも屈指の良機体ではないかと思うんですよ、ホント。テレビ版ではデカい岩投げつけたりしていたので馬力もありそうですしね。(笑)

 

個人的には「スパロボ」のクロスオーバーとして、「F91」のクロスボーンバンガードのフロンティアサイド襲撃のエピソードで、守備隊は戦火を広げるばかりで襲来したクロスボーンバンガードに対してなすすべない状態。戦火から逃げ惑うシーブック達民間人の退路を確保する為に、ロイ将軍の博物館に視察に来ていたカイとたまたま居合わせたハヤトがそれぞれ展示されていたガンキャノンとガンタンクに乗って出撃…2機とも旧式ながら改造済みで、カイとハヤトも昔取った杵柄でクロスボーンの舞台を翻弄していく…というifを「スパロボ」で妄想してたんですが…実現はしませんでしたねぇ…。

 

記事書くのに回想してたら「哀戦士」を何だか見たくなってしまいましたね、ええ。やっぱ「初代」はカイとガンキャノンですよ、ホント。

コメント
良いですよねカイ・シデン
初代における名脇役の一人だと思います
子供の頃はいらんことばっかり言っているように思えてあまり好きなキャラでは無かったですが、歳を取るごとにむしろ彼の魅力が分かってくるというか
鮭の皮みたいな感じですね(クッソ下手な例え)
  • KS
  • 2019/06/03 6:29 PM
私も1stはカイさんが好きでしたね。ってか、いまもそうかな。まあ、ある程度、年取ってからは、ブライトさんが猛追してますが(笑)。
カイはある意味、最も等身大だったかもしれませんね。アムロはスーパーマンだし、シャアは華やかだし。
そのくせ、カイも充分にMS戦の天才といえると思いますし。アムロの戦果と、ブライトの能力が異常なんです(ブライトも、19であれほどの指揮、管理能力ですからね/笑)。
ともかく、哀戦士の曲が被るとこの、古川さんの演技もいいですよね。
カイファンとしては、Z以降もMSに乗ってほしかった気もしますが・・・彼のキャラを考えると、ジャーナリストでいいのかもしれませんね。おかげで、ユニコーンにも出演できたし(笑)。
  • 百万式
  • 2019/06/03 10:06 PM
感想感謝です。
一見、軽薄で皮肉屋、厄介な人に感じられる描写の多いカイですが、ホワイトベースに乗る事になった民間人の中ではかなりリアリティのある描写をされたキャラクターな気がします。ブライトやリュウに食って掛かるシーンにしても、普通なら…というか、自分がこの状況だったらカイに近い行動をとっちまうな、と思わせるキャラクターでした。

というか、アムロにしろセイラさんにしろハヤトにしろ…状況に馴染むのが早いというか、達観しているというか…。

地味にあるカイの人気の秘密って、そういう部分に起因しているのかも知れませんね。
  • 零哭堂
  • 2019/06/05 8:27 PM
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