選ばれなかった男

  • 2019.09.03 Tuesday
  • 21:13

今回はマイフェイバリットロボット漫画「ゲッターロボ」シリーズからこの人。

 

「ゲッターロボシリーズ」より 神隼人(画像は「ゲッターロボ號」のワンシーン)

 

「ゲッターロボ」の主人公はゲッターチームの3人なんだから、隼人は脇役なんかじゃなくて主人公の1人だろ、というツッコミがあると思うんですが、ココで敢えて「脇役」としたのにはちゃんと理由があるんですよ。

 

アニメ(東映)版での隼人は、以降ロボットアニメの2号パイロットのフォーマット的な「キザでニヒルでカッコつけ」というキャラクターを確立したキャラクターとして知られ、リーダーであるメイン主人公と時に衝突する事でドラマを盛り上げる役割を与えられているキャラクターです。メイン主人公に対抗する意味でもキャラクターが立っていて、

 

「俺はボインちゃんが大好きでな」

 

という迷言や、リョウを差し置いてヒロインのミチルを射止めたり、と活躍頻度も多かった訳です。東映アニメ版でも個性あふれるキャラクターではあったんですが、石川賢先生の漫画版では更に過激な味付けがされています。というのも隼人は学生運動過激派のリーダーであり、学校の一部を「隼人の校舎」として占拠している危険人物でして、仲間への内ゲバも辞さない残虐な男として登場します。

 

この「目だ。耳だ。鼻!」のシーンはあまりにも有名ですね。

 

東映版の健全?路線とはかけ離れたバイオレンス感あふれる石川賢版「ゲッターロボ」ですが、キャラクター自体はキョーレツなものながらちゃんとロボット漫画的な熱い作品でもあるんです。当然隼人にも見せ場はある訳で、特に「G」ではかつての学生運動過激派だった頃の仲間達が百鬼に改造されてしまうエピソードなんかがあったりして、主人公たるゲッターチームの一員として魅力十分…なんです。

 

…が!!「ゲッターロボ號」から隼人のポジションに変化が現れます。新たなゲッターチームを率いてプロフェッサーランドウと戦う男、として登場するんですが、このポジションを与えられて以降、隼人のポジションに明確に変化が出てきます。その変化と言うのが、メイン主人公たる流竜馬との対比として描かれるんですが、どこが竜馬と違っていったのかと言いますと、竜馬が半ばゲッターに「選ばれた」のに対し、竜馬以上にゲッターに執着しながらも隼人は「選ばれなかった」点。

 

早乙女研究所でのゲッタードラゴン暴走事故以降、ゲッター線とゲッターロボに対して懐疑的になりゲッターに乗る事を拒否した竜馬に対し、隼人はむしろゲッターが導こうとする未来に焦がれていた節がある訳です。「號」を受けて描かれた「真ゲッターロボ」ではゲッター線の第一人者である早乙女博士に半ば弟子入りのような形で自らもゲッターロボの建造に携わり、暴走事故にも関与しています。但し、隼人は同じく研究所を消滅させるに至った暴走事故を経ても尚、ゲッターに携わる事を止めなかった…それが「號」の物語な訳で。

 

ゲッター線を危険だと認識し、ゲッターロボを拒んだ竜馬がゲッター線に選ばれ、ゲッターの行く末、導く未来に執着していた隼人が結果的に置いてけぼりを喰らう…隼人はゲッターの凄まじさを誰よりも知る人物であり、同時に武蔵、弁慶、早乙女博士といった、ゲッターが導いた故の悲劇も目の当たりにしてきた男。つまり、隼人こそが「ゲッターロボ」という神話の語り部として選ばれた…だからこそ、彼はゲッターを求めつつも選ばれる事が無い「脇役」になってしまった…それは恐らく、隼人にとっては戦いで死ぬことよりも歯がゆく、耐えがたい事だったのではないか。

 

…久々に「ゲッターロボ」を読み直すと、そんな事を思ったのです。

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