…お前も太ってみるか?…デブは弾じゃなかなか死なねぇぞ…

  • 2019.04.06 Saturday
  • 20:51

私の様なデブというのは、世の中では肩身が狭いのです。エレベーターで重量超過のブザーが鳴ろうものなら先に乗っていたにも関わらず睨みつけられ、夏の満員電車では特に若い女性から露骨に嫌な顔をされます。アメリカでは禁煙車と肥満体はその学歴や能力がどうであれ一流企業では出世できない…なんて話もあります。理由は自分の身体の維持管理も出来ない自分に甘い奴…と判断されるからなんだとか。

 

だが敢えて言おう!!

我々の身体は余人より過剰にカロリーを摂取してきた賜物…贅肉とは読んで字のごとし、「贅の限りを尽くした肉」に他ならないのです。そんな贅肉を、痩せたいからと言う理由で高い金払ってジムに通いそぎ落とす…それこそ資本主義に踊らされる哀れな存在ではなかろうかと!!食べたいという欲求からも、そして痩せたいという欲求からも逃れられないなんて、デブより余程自分の欲望に弱い、自分に甘いという証拠であろう。むしろ自身の健康や世間の評価すら無視し、デブであり続ける事を貫くデブこそが、真の意味で鋼の意志の持ち主と言えるのではなかろうか!!

 

そもそもどーせ私らの世代には豊かな老後なんてありゃしない。年金なんざ当てにできそうもない。だったら自分の体形と同じく、短くとも太い人生を歩みたいですわ。

 

…まぁ、半分くらいは冗談ですが、フィクションの世界にはデブなのに魅力的なキャラクターというのがいます。その代表格が、この人物かと。

 

漫画「strain」より 祭紫明

 

「strain」という漫画は、「サンクチュアリ」や「HEAT-灼熱-」「BEGIN」等でお馴染みの武論尊(史村翔)先生と池上遼一先生のタッグで描かれた作品。舞台はマレーシアで、たった5ドルで殺しを請け負う虚無的な殺し屋・馬勇(マヨ)と日本人の父を持つ少女・シオンを巡る数奇な運命を描いた作品。日本経済が元気で、マレーシアが貧困にあえいでいる…という設定に時代を感じますが、ストレイン…「血族」をテーマとした劇画の傑作と言えるかと。

 

で、この祭紫明という人物、華僑が牛耳るマレーシアマフィアのトップに君臨する男ですが、出自が売春婦の子供…正当な血族ではない為に巨大な華僑の組織内では重鎮たちからはいい様に使われている立場。ただ彼はその立場に甘んじず、強い野心と頭脳…言わば実力でのし上がり、最終的には組織に反旗を翻します。

 

この台詞がまた、カッコイイんですよ。

 

彼は自身の体躯…肥満体が醜い事を自覚しています。自身の肥満体も、組織で正当に評価されない出自も、元を正せば売春婦だった彼の母が原因。自身のキョーレツなコンプレックスの元凶…それでも彼は母親を愛し続けます。彼は美しい想い人がいましたが、彼は自身のコンプレックスからその女を暴力で縛る事しかできず、結果裏切られます。それでも、彼は一途にその女を愛していたのです。狡猾で残忍、冷酷な祭紫明…そんな彼が組織からの刺客を向けられ、追い詰められた状態にも関わらず彼を体を張って、正に命を賭して守ろうとした部下…刺客達はそんな彼に聞きます。「そうまでして守る相手じゃないだろう」と。でもその部下はこう答えます。

 

…クク…それがそうじゃねぇんだ…おめェらにゃうちの紫明(ボス)の事は解らねェ…

う、うちの紫明(ボス)はよォ…ああ見えても暖けェんだ…

…親もしらねェ…名前もねェ…糞ダメのような所で這いずり回っていたオレ達を拾い上げてくれたんだよ…

…う、嬉しかったんだぜェ…

…れ、玲花という女だって…ボ、紫明(ボス)は最後まであの女を本当に愛してたんだよ…

 

そう、強大な敵として立ちはだかった祭紫明ですが、意外にも非常に人間味のあるキャラクターなのです。ある意味、この作品における第三の主人公、と言える存在だと思うのです。そしてそんな彼は自身でも忌むべきものと感じていた己の肉体…デブであった事で九死に一生を得た後、華僑の重鎮である葉一族にキョーレツな意趣返しを。しかしその後、一族の長に行動を読まれ絶体絶命に…その窮地を救ったのは、彼にとって最大の宿敵であり、友だったのです。

 

そんな彼…いや、彼等には最後にちょっとしたどんでん返しが待っていて、意外なその後が巻末にて描かれるんですが…コレはネタだけ書いても面白さは伝わらないでしょうね。作品を物語として全て読み終わった後だから、生きたシーンだと思います。

 

武論尊&池上作品の中では評価がビミョーな気がしますが、間違いなく「strain」は傑作だと思います。そしてその魅力の一端は、人間味あふれるデブ、祭紫明の存在があってこそだと思うのです。

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