File16 黒死蝶殺人事件

  • 2019.03.12 Tuesday
  • 16:12

はい、久々の「金田一少年」読み直しです。

今回のエピソードはこんな感じ。

 

剣持警部のツテで警察の保養所で楽しんだ帰り、ハジメと美雪はフリーライターのいつきと再会する。彼はかつて自分達が巻き込まれた悲恋湖での殺人事件の犯人・遠野英治にそっくりな人物がある雑誌の記事に掲載された写真に写り込んでいたとハジメ達に伝える。遠野は事件後爆死したと思われていたが、遺体は派遣されておらず生存している可能性はあった。写真の人物が遠野なのかを確かるべく、3人はその写真に写るもう1人の人物…絶滅種の蝶をよみがえらせたという班目紫紋の屋敷を訪ねる。

 

死んだと思われていた人物と瓜二つの男が現れて、その人物が本人なのか別人なのか…というのが軸になる、というのはサスペンスやミステリーの題材としては割とあるパターンですが、「金田一少年」でこのパターンは今回が初ですかね。いや、過去の事件で死んだと思われていた人物が(主に犯人として)現れて…というのはあるんですが、劇中で犯人役…しかも最後自殺したと思われた人物の再登場は今までなかった…筈。

 

ただまぁ…今回のエピソードの内容をすっ飛ばして先ず言ってしまいますが…今回の事件、遠野にそっくりな人物…深山は犯人ではなく、最後はこのエピソードの主要人物と結ばれる…という結末。言わばハッピーエンドになっているんですが…いいのか?それで…という思いを抱かずにはいられないのです。

 

なんせ遠野という人物が起こした「悲恋湖伝説殺人事件」というのは、ある船舶事故において最愛の妹を見殺しにした奴…遠野が分かっていたのはイニシャルだけで、その船舶事故に遭遇した同じイニシャルの人物を片っ端から集めて殺害する…というトンデモナイ殺人事件です。つまり、遠野は妹を見殺しにした奴もろともイニシャルが同じと言うだけで無関係な人物も殺めている人物…サイコパスと言っても過言ではないと思うんですわ。それを…遠野=深山とハッキリ言及はされた訳ではありませんが、今回の事件で幸せをつかんでしまう…という結論には、私でなくとも違和感というか、否定したくなる人は少なくない筈。

 

ハジメ曰く、「遠野は悲恋湖で死んだ。あそこにいるのはこれから新しい人生を踏み出そうとしている深山と揚羽だ」みたいな事を言っているんですが…

 

 

本当にそうでしょうか?(youtube見てるとしつこく流れるよね、このCM/笑)

 

深山=遠野という前提で話をしますが、彼は遠野としての記憶を全て失った状態で深山として揚羽に好意を寄せ、結婚に至る訳です。ただ記憶喪失ってのは厄介で、死ぬまで記憶が戻らないかもしれないし、突如記憶が戻るかも知れない…当然、ハジメ達は揚羽に彼が記憶を失う前に犯した凶行を伝える様な事はしていないでしょうが、ミステリーやサスペンス的な展開として、悲恋湖の事件に関連して深山の事を知り、遠野=深山と確信して例えば強請りにかかってくるなんて可能性はある訳です。それ以前に、深山が突如遠野としての記憶を取り戻してしまったら…コレ、どっちにしてももう1本エピソード書けるレベルですよね。

 

個人的には、深山=遠野ならば悲恋湖の罪の清算はなされるべきだったんじゃないかと。記憶を失ったとはいえ、罪を逃れたままで本当の幸せなど、訪れないと思うのですよ。

 

ただまぁ、ハジメが深山を見逃した心情は分からなくもないんです。

今回の事件、同じ人物に対して別の人間が企てた違う形での復讐が、ふとした誤解と思い込みから悲劇に繋がった…悲しくもやりきれなさの残る事件です。しかも、真犯人と"もう1人の復讐者"は共に最後、自殺して果てるという誰も救われない結果になってしまった…その犯人と復讐者の残したのが

 

「『生きる』ことが『死ぬこと』よりはるかにつらいこともある」

 

という言葉。これをどうしても否定したいハジメにとっては、深山=遠野を見逃すしかなかったのかも知れません。

 

ちなみに、個人的なイメージでは「金田一少年」はラストで犯人が自殺するか誰かに殺されて終わり…という印象があったんですが、この辺のデータをまとめているサイトがあったので見てみたら…犯人が最後逮捕されて終わったエピソードの半分程度なんですねぇ。今までのエピソードではかなり死亡率高い気がしていたんですが…。

 

ハジメ自身、エピソードを重ねるにつれ、罪を犯して償わず死ぬのは卑怯、生きてさえいればいくらでもやり直せる、という性善説的な思想の持ち主として描かれる様になって来ている気がします。特に、悲劇的なバックボーンがある犯人に対してはラストは犯人側に寄り添い説得するようなケースもあるので、事件に巻き込まれる都度、何かしら思う所があってこうなっていったのかも知れませんね。

 

…そうなると、「37歳」では何でああなってしまったのかが気になる所ではあるんですが。

 

あ、今回トリックとか事件そのものにあんまり触れてないなぁ。蝶を題材にしたエピソードだけあって、蝶を使ったユニークなトリックがあったり事件解決に至ったキーワードも蝶だったりと、中々ミステリー的にも面白いエピソードだと思います、ハイ。

 

今回の犯人

小野寺正之 犯人強度 65万パワー

非常に奇抜なトリックを用いたが、エピソード的には深山に食われてしまっていて凡庸な印象。

復讐とは言え12歳の何も知らない女の子にまで手をかけるのは如何なものか。(しかも誤解だし)

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