無知で最低と分かった上での最低

  • 2019.02.01 Friday
  • 20:28

今回はコレ。

 

芝村裕吏&キムラダイスケ 「マージナル・オペレーション」 現在12巻まで発売中

 

長年ゲームに明け暮れてニートだった新田良太は一念発起して会社に勤めるも勤め先が倒産。金欠で家賃も払えないと思案する中、ネットで偶然見つけた民間軍事会社「自由戦士社」の求人に応募する。タジキスタンでの新人研修で新田はチープなCGの戦術シミュレーションをやらされるが、ゲームで培った分析、判断力でオペレート任務を着実にこなす。しかしその訓練は現実の軍事作戦を実際にオペレートしていた事を知り…

 

という、今から然程遠くない未来を舞台にした人気小説のコミカライズ。原作を描いているのは「高機動幻想ガンパレード・マーチ」や「絢爛舞踏祭」といった独特の世界観やシステムを持つ人気ゲームを手掛けた芝村裕吏氏です。未来、といっても超技術的なものは主人公が愛用するiイルミネイター位なもので、重火器などは現行のものとほぼ同じ。描かれる街並みも現在と大差ありません。一応2020年代初頭ですからね。

 

民間軍事会社に入社した主人公が赴任先のキャンプモリソンで使い捨て同然で酷使される少年兵達と出会い、いつか彼らに戦闘とは無縁の平和な生活を与える、という目標を持ちながら、その手段として彼らを使っての傭兵業で稼ぐしかない矛盾に苦悩し、苦闘を続ける。そんな彼は業界内で「子供使い」の異名で知られるように…という「理想と現実」を描いた作品な訳ですが、多少陰惨な展開や描写はあるものの、実の所戦闘描写とかは薄口な部類。何せ、主人公は指揮官であり自分で前線に立って英雄じみた活躍とかはしない作品です。絵的には多少地味になるのは仕方ない所かも。

 

ただ、少年兵というどうしようもなく今現実にあるものと向き合い、必死になって抗う新田の姿は安直なヒーローモノとは違った魅力があります。それがよく出ているのが、最新12巻でのある描写でしょうか。新田の元に、日本の安全保障セクションのエージェント・イトウさんからWACの斎藤さんを派遣され、面倒見る事になった訳ですが…彼女、日本人らしい正義感をむき出しにして新田を非難します。こんなことをしていて何も思わないのか?他に方法はなかったのか?と何かの事件の時にマスコミが犯人に言いそうな事を聞かれた新田は

 

思うよ。

この境遇に至る前に少しの募金でもやっていれば…ここまで苦しくはなかったろうか?…とかね。

君が今までどんな世界を見てきたか、僕には分からないし、君が今、剥き出しにしている正義感を否定はしない。

だが…君の知っている世界の外側にも子供はいる。

ここでは僕がその子供たちをまとめて、ビジネスにしている…というわけだ。

 

方法…?君は知ってるのか?他の方法を。

知っているのなら、僕の全財産で買わせてもらう。

だが、口だけで実現性のないプランは必要ない。

 

とし、更に

 

君の言うとおりだよ。

僕は最低だ。君はどうだ?

我々はもうすでに最低だ。無知で最低か、分かった上で最低か。

その違いだけしかない。

君は今まで無知で最低だった。これからは分かった上で最低になる。

 

と告げます。コレ、地球上に住まい文化的な生活を営む全人類に対しての言葉でしょうね。

これまで彼に付き合ってきた読者なら、新田の心情…斎藤さんに突かれた核心に対してのやりきれない感情は痛い程分かる筈。このやるせない感じこそ、「マージナル・オペレーション」という作品の根源だと思うのですね。そんな新田にはオマルと一緒に彼の肩を叩きながら、

 

「お前は最低じゃない」

 

って言いたくなりますよ、ええ。

現実でありえそうな展開をベースに、ちっぽけな…ちょっとした才覚を持った男が、たまたま知り合った子供達の現実に触れて、クソったれなその現実に必死に抗う姿を描いたこの作品…ミリタリーや政治や世界情勢とかの知識は案外不要な作品です。ヘビー過ぎるのは嫌だけども、たまにはちょっとズシッと来る作品を…という方、オススメです。

 

さて、本人の朴念仁っぷりはさておき、新田の周囲には彼を慕うヒロインは多い訳です。ジブリールを筆頭に、ソフィア、ジニ…そして12巻にて再会したシャウィー改めホリーさん…本人は気付いていないのか、はてまた気づかないふりをしているのかはさておき、生来の異性への奥手さから今の所明確なメインヒロイン扱いになっているキャラクターはおりません。一応、作劇上ではジブリールがメインヒロイン的で一歩リード…みたいな所はありますが。

 

でも…私が思うにメインヒロイン…というより新田が嫁にするのならやっぱり…

 

ホリーさん一択ですよ、ええ!!(力説)

 

新田はタジキスタンでの研修時代に売春宿にいた彼女と出会います。基地で彼の日本語通訳を担当した他、売春宿では個人レッスンで新田に英語を教えた女性です。

 

見ず知らずの土地に放り込まれた新田にとって、会社の人間以外で初めて信頼のおける人がシャウィーさんであり、研修のシミュレーションの真実…実際の軍事作戦だった事を知り、憔悴し壊れる寸前だった彼を癒した…正に新田にとって物語序盤でのMVP的な人。多分、彼女と出会わなかったら新田はダメになっていたんじゃないか…そんな事を思わせる人なのです。ちなみに2人は性交渉なしの清い関係。出会いが売春宿なのにね。まぁ、オマケ漫画では一歩手前まではいきましたが。(笑)

 

新田に英語を教えた報酬(といっても本来は売春の対価)で自分を買い戻し、故郷であるミャンマーに戻って新田と再会した訳ですが…いや、ほんっとこの人、いい女ですよ!?ええ。

 

おおらかさ、包容力、明るさ、気遣い…しかも美人ときたもんだ!!

新田に会う前にミョーに化粧とかに気合が入っている所とか、再会した後の基地へ向かう車中でのジニをからかった悪戯っぽいやり取りなんか、サイッコーに可愛いでしょ!!

新田との縁も強そうですし…メインヒロインはホリーさんに決まりですわ、ええ!!

 

…こんな事言っちゃうとジブリールに背後から首かっ切られちゃいそうだけどな!!

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