意外と重い部分もある学園コメディ

  • 2018.10.06 Saturday
  • 22:33

今回はコレ。

 

野呂俊介 「スピーシーズドメイン」(写真は最新9巻)

 

別冊少年チャンピオンで連載している異種族や亜人的なモノを扱った学園コメディです。同じようなテーマですとアニメ化も果たした「亜人ちゃんは語りたい」がありますね。ただ亜人達のその性質やら生態から来る悩みを「違う事を知っていく」という事が根底にあった「亜人ちゃんは語りたい」に対し、本作の場合は「あるがままに受け入れる事」を描いている作品、と言えるかもしれません。

 

まず本作の設定に、新生児が異世界の種族と入れ替わってしまう「取り替え子」というものがあり、主人公の1人・風森さんはエルフの取り替え子。しかし取り替え子といっても物理法則その他は今現在の地球のそれなので、エルフとして連想しがちな精霊魔法とか風魔法といったものは使えない…故に彼女はエルフの気高く荘厳なイメージを崩さない振る舞いを自分に課して生活していた女の子。彼女が通う高校は取り替え子を優遇して受け入れている、という事で、他にも数多くの取り替え子が在籍しています。

 

ここでこの作品の面白い所は、ノーマルの子も、両親が取り替え子という混血も、勿論取り替え子も…皆が皆受け入れ合っている点。現実の人間社会でさえ宗教、肌の色、国籍その他諸々による差別が横行しているというのに、取り替え子や種族を種にした所謂イジメ的なモノが一切ない優しい世界になっているんですね。むしろ、個性的だったり目立つ存在の生徒を「四天王」等として祭り上げて楽しんでしまう…といった遊びにしてしまう程。まぁ、この四天王は生徒会長、風紀委員長、男女それぞれの不良グループリーダーと肩書があり、一般生徒や素行が悪めだったりする生徒をそれぞれがまとめていくというシステムでもあるんですが。

 

ともあれ、本作の魅力は「受け入れてしまう」という各キャラクター達の度量の大きさ、懐の深さでしょうか。異種族なんだから違っていて当たり前、違うからこそ面白い。コレを地で行く作品なんですね、この「スピーシーズドメイン」は。コレはアレだ…少し前に大流行したけど監督降板とかのゴタゴタで最近は名前もあんまり聞かなくなった気がする「けものフレンズ」における、

 

「すごーい、きみは何某が得意なフレンズなんだね」

 

とかと一緒なんじゃないかと…いや、ワタクシ「けものフレンズ」見た事無いんだけども。(笑)

ただ、そんな「優しい世界」にも苦悩はある訳です。イメージとは裏腹に魔法とかが使える訳でもない風森さんは、せめて立ち振る舞いだけでもエルフのイメージを崩さない様に…と自分を作って生活していたし、彼女の親友・翼人の羽井は大きな翼があるのに飛べない事に人知れず苦悩していて、彼女の同族の幼馴染に至っては不便だからと翼を手術で切ってしまってすらいます。そしてトドメに主人公グループの一員で鬼の取り替え子・魅重義は取り替え子故に施設に預けられてしまい、その事が一種のトラウマとなっていて他人からの好意を信じきる事が出来ない。

 

更に、ノーマルの田中に思いを寄せるドワーフの混血・土和はヒゲが生えた女子高生。土和自身は好きだがヒゲを受け入れる事が出来ない田中の為に、自身のアイデンティティとも言えるヒゲを剃る土和だが、そんな土和を最高にタイプだとしつつもそんなのは土和じゃない、だからヒゲごと自分を落とせ、と言う田中や、人魚の身体は男女ともある1点…要はチンコの有無以外はほぼ同じ身体故、本当は男だが女として、人魚だという事を隠して生活していた水野さんがふとしたキッカケで自身が男であることが知られてしまう…その時に彼女のクラスメイトの女子達が取った反応等、ノーマルと異種族間にも色々と悩みどころは出て来る訳です。

 

ただそれでもノーマルだから、異種族だから、という点でお互いを否定しない、差別もしない。全てあるがままを受け入れていこうとする…そこが本作のキャラクター達の最大の魅力なんじゃないかと。勿論それは主人公の一角にしてノーマルながら魔法じみた科学を駆使する大機も同じ。というか、エルフだの翼人だのオークだの人魚だのセルキーだの河童だの天狗だの鬼だの色々異種族が登場する本作ですが、一番不思議というか、奇天烈なのはコイツなんだよなぁ…一応ノーマルな筈なんですが、大機君は。(笑)

 

ともあれ、一見異種族も一緒になってのドタバタな学園コメディ…というライトな印象を受けがちな「スピーシーズドメイン」ですが、結構重いネタを内包していてそれでいて暗くなったりせず明るい青春譚として描いているユニークな作品なのです。チャンピオン系連載なので実現するかは正直ビミョーな気はしますが、アニメ化とかしたら面白いんじゃないかな?と個人的には思っている作品です。

 

ただなぁ…最近はカップリングばかり優先している印象で…「徒然チルドレン」じゃねぇんだから、と思う所はあったり。まぁ、紅川君と長渡さんとか面白いのは面白いんですが、恋愛カップリングばっかりにしてしまうのは本作の場合、勿体ないとも思うんですよね、ウン。

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