FILE.41 蟻地獄殺人事件

  • 2023.08.12 Saturday
  • 23:59

ご無沙汰の「金田一少年」読み直し、今回はFILE.41「蟻地獄殺人事件」ですが、コミックスではその前の40「狐火流し殺人事件」の間に若かりし頃の明智警視が主人公の短編「学生明智健悟の事件簿」が収録されているので合わせて紹介しておきます。

 

大学生の明智が久々に母校を訪れると、校舎にはピアノで奏でられたベートーベンの「月光」が響いていた。明智は恩師である教師・姫野から相談を持ち掛けられる。高校の卒業生であり、明智にとっても先輩にあたる「秀央のミスDJ」こと美国礼奈…彼女が先日訪れた際、自殺をほのめかした彼女の様子をそれとなく探って欲しい…という頼みだった。

大学の学園祭にかこつけて彼女の大学を訪れる明智。そこで彼は西東医大の海堂という男の悪い評判と、彼が礼奈と関わっているという噂を耳にする。そして、彼女がDJを務めるラジオが流れる中、海堂の死体が発見される。

 

エピソードとしては割とありきたりで、礼奈は恐らくはコンパか何かの時に一服盛られたか泥酔させられたかで海堂から性的暴行を受け、その時にその様を写真に撮られた事て彼のいいなりになっている…その復讐とその状態からの解放が犯行の理由。女性の性被害の類は現実でも被害者が中々告白できない状況になり易い…と聞きますから、こういったミステリの動機としてはよく使われますね。2時間サスペンスとかではよく見るパターンです。

 

最初から犯人は提示されており、謎解き要素は薄め。ハジメの旧友が登場するエピソードと同じく、物語としての「ほろ苦さ」を強調した話になっております。ちなみにこのエピソードは明智と剣持が出会った事件になっています。しかし明智警視…ミスチルとか聞くんですねぇ。気取ったクラシックとかしか聞かない人かと思ってましたわ。

 

今回の犯人 美国礼奈 …犯人強度 60万パワー

生放送の収録中である事をアリバイ工作に利用…というのも結構あるパターンで、それが天候などブースにいては分かる筈がない事を発言してしまって…というのはこれまた結構あるパターンかと。確か似たようなエピソードが「相棒」にもあった筈。ちなみに彼女の単独犯行ではなく、共に番組を制作している名取めぐみが協力者。

 

 

さて、こちらから「蟻地獄殺人事件」です。

 

スマホゲーへの課金で金欠のハジメの元に、いつきからとある場所で行われる実験のモニターという高額バイトの誘いが。期間は3日で食事つき、一日当たり2万支払うというその誘いにホイホイ乗ったハジメは美雪を連れ立って実験会場となる施設、通称"蟻地獄壕"に。ここは砂丘にある旧軍の捕虜収容施設で、あちこちに蟻地獄の様な流砂があ危険な場所。ハジメ達はそれぞれ違う色の服を着せられ、バイタルを測定するリストバンドを装着しそのデータを記録するというのが実験の主旨だった。しかし実験初夜、参加者の1人である彩世泉のバイタルに異常を検出。彩世の部屋に向かうも、東棟のハジメの部屋からは鍵がかかっていて西棟に行く事は出来ない。いつきに鍵を開けてもらい西棟に入るハジメだったが、鍵を開けに来る途中で背中から刺された彩世の遺体を発見した…と。

 

アリの巣の様に入り組んだ奇妙な建物で行われた殺人で、トリックの鍵は文字通り各部屋を繋ぐ通路の鍵…かと思いきやそれはある意味ミスリードになっています。勿論、実験に使っている5分おきに装着者のバイタルを測定するリストバンドもトリックに使われており、色々とギミックが面白く、部隊設定とかに関しては「金田一少年」の中でも一際ユニークなエピソードです。

 

但し、トリック自体は割と原始的で複雑なものではないので、謎解きとしての難易度はかなり低いんじゃないかと。トリックもそうですが、舞台設定のユニークさに比して犯人の犯行動機も「殺された恋人の復讐」という「金田一少年」の典型的なパターンににっており、被害者同士だったりのドラマもかなり薄口。ギミックに比べ物語としてはなんともインパクトの薄いエピソードになってしまっている感が。

 

あ、ちなみに今回の黒幕は高遠です。でも今回は見苦しい言い訳とかなしにあっさりトンズラ。

ただ高遠の目的はハジメとの対決ではなく別の所にあったのでは?と匂わせる作りになっていて、ハジメに「こんな事件はまだ続くかもしれない」的な事を言わせての幕引きに。意地悪な事を言うと、物語としての構想を組んだ時点でインパクトの弱さを送り手側が自覚してしまい、"そういう事にした"のでは?と疑ってしまう程。要するに、一言で言ってしまえば「物足りないエピソード」ですね。

 

今回の犯人 舞谷かえで …犯人強度 45万パワー

体形や背格好が似ているから…と死体のふりをしてやりすごすというのは…うーん…と思わざるを得ません。確認の為に顔をちゃんと見るとかするんじゃないか?同じ大学で一緒に旅行するレベルの友人もいたのだし。「よほどの事がない限り死体をジロジロ眺める奴はそういない」というハジメの言では弱い気がします。今回剣持さんや明智警視が不在なので現場保存の原則とかも理由に出来ないでしょうし。

 

あ、余談ですが…高分子吸水性ポリマーを使ったイタズラが今回の犯行理由である草凪蓮の死の原因…ってありましたが、ライフジャケット内の吸水性ポリマーが水を吸収したら約50倍の重さになる…とありましたが、アレは水を貯える性質があるだけなので、その比重は空気よりは当然高くなりますが水より高くはならんと思うのですが…。国体クラスに泳ぎが達者な人がそれで溺れるか?と。

彼が溺れた原因はむしろ突然ライフジャケット内が膨らんだ事でパニックになった事と、ゲル状に変化した吸水性ポリマーに動きを阻害されたから…とかにした方が適切だったんじゃないかなぁ…と。

FILE.40狐火流し殺人事件

  • 2022.05.03 Tuesday
  • 23:16

今回の事件はこんな感じ。

 

ハジメの部屋の掃除中に見つけた一枚の写真。そこには6年ほど前にハジメが入っていたカブスカウトの友人達と写っているいる懐かしい写真だった。そこに届いた電報…そこには、そのカブスカウト時代の友人の1人・月江茉莉香が亡くなったとの知らせが。ハジメは単身、茉莉香の実家がある白狐村なーに向かう。そこにはかつてのカブスカウトの仲間が勢揃いしていた。村に住む桐谷凛以外の面々はハジメと同じく茉莉香の死を知らせる電報を見て駆け付けたと言うが、彼女が亡くなったのは2ヵ月も前の事で、凛も電報を送ってはいないという。何の為に集められたのか…そんな中、村の風習である狐火流しという死者の霊を慰める行事が行われるが、そこでハジメを待っていたのは悲劇だった。

 

…という、導入部以外に美雪が登場せず、ハジメの旧友達を巡る殺人事件で結末含めシリアスで切ないエピソードになっており、ほぼ同じスタイルだった「雪影村殺人事件」を連想させられる事件です。

 

事の発端は茉莉香の死。事故や病死ではなく明らかな殺人で、死体が白狐に見立てられていた。白狐村では「白狐様の祟り」と恐れられた…とされましたが白狐様、いつもなら所謂「怪人役」になるんですが、今回のエピソードは物語性を重視している為かあまり出しゃばっては来ませんし、トリックとも直接的な関係は薄めだったりします。

 

というより、「雪影村殺人事件」と同じく犯人特定はかなり容易で、かつトリックの謎解きも気づいてしまえばあっさり…というレベルになっていて、何時もの謎解きや犯人当てを楽しむ「金田一少年」とは聊か異なった趣のエピソードになっています。とはいえ、やや超常現象じみたトリックを用いた「雪影村」とは違い、トリック自体は突飛なものではないので非常に読み易い形に仕上がっています。それ故に、ハジメの苦悩ややるせなさがダイレクトに伝わってくるのですが。

 

ネタバレになりますが…まぁ大分前の漫画なので良いとしましょうか。

事件の元凶となったのはハジメも参加していた6年前のカブスカウトですが、何か一つでも「もしも」がその通りになっていれば防げた…というより、起きなかった筈の事件。その「もしも」の遠因の一つがハジメである事も悲劇的と言いますか。最後のハジメの独白と涙が…悲しすぎるエピソードです。

 

余談ですが…6年前の事故後、真犯人の家族を結果的に滅茶苦茶に壊してしまったイタズラ…スズメバチをペットボトルで捉えてそれを殺人に利用する…いや、このエピソードでは殺人を意図した訳ではなく当人達は飽くまでイタズラ、嫌がらせ程度の認識だった訳ですが、コレ…「相棒」のseason13の14話「アザミ」でも使われてますね。このエピソードは平日午後の再放送で頻繁に放送される話の1つですが、幼い双子の片割が殺されて生き残った方が殺された方に成り代わっていた…というのがオチ。

 

ただ気になるのは、殺された子の方は小児喘息だかを患っていて、その治療に行く際に入れ替わって殺された。そして小児喘息ではない方の子が生き残っている形になるんですが…そうなると、見た目がそっくりな上に演じる事で大人を騙せた…というのは納得するとしても、小児喘息の件はどう誤魔化したんですかね?仮に小児喘息のふりをして治療を続けようとすれば医者は気づくし、急に治ったと治療を止めるというの変に思われてしまうのでは?なんて思うんだよなぁ…と。このエピソード見た事がある方、どう思います?

 

 

今回の犯人 神小路陸 …犯人強度 65万パワー

6年前は貧しい生活の中で母が何とか工面して買ってくれた靴…あかりが蛇に噛まれた際に靴紐を使うのを渋ったのも、母のそんな想いをしっていたから。しかしその態度が原因で母がやってはいけないイタズラの餌食となり、その責任が彼にあると父親に思われてしまう…といういたたまれないさで、イタズラを実行した3人に殺意を抱くのも無理からぬ事かもしれない。ただ、生来は優しい性格だった筈の彼…何か一つでも「もしも」が現実だったら、この悲劇は起きなかったかと。

FILE.39 亡霊校舎の殺人

  • 2022.05.02 Monday
  • 01:58

はい、久々に「金田一少年」です。

また実写ドラマがやる…やってる?らしいですが、今回もハジメ役はジャニタレなんだそうで。まぁ、どう見ないんですけどね。

 

今回の事件はこんな感じ。

 

伊豆の軍艦島と呼ばれる黄金島…元は金鉱として賑わっていたが、現在は人が誰も住んでいない廃墟となった無人島。しかしこの島には未だ200kgの金塊が眠っていると噂されており、金塊発掘ツアーが行われており大人気となっていた。本来は予約を取るのも困難なそのツアーに参加出来ることになったハジメと美雪。島に到着した2人だが、そこには剣持警部と明智警視の姿が。そして起きる殺人と、その背後に忍ぶ「地獄の傀儡子」高遠の目的とは!?

 

…という、高遠ネタです。

今回は、作者の趣味が高じたカフェふくろうが初登場です。ある意味「R」のキモ的な存在かも知れません。ただこの事件は高遠絡みではあるんですが、使われるピエロの恰好をした高遠が子供達に紙芝居を見せる体で事件について匂わせる、前説的な事をやった他はハジメ達の前に姿を現す事もなく、謎解きシーンでも無線で聞いているだけ…といつもより出しゃばっていないのが特徴。

 

と言いますか、「R」シリーズの高遠は自分のミスは棚に上げて真犯人に死の制裁を加えなかったり、そもそも毎度呼びつける割にハジメとの決着についても然程執着していない印象…っても、毎度毎度ハジメを巻き込んではいるのですけどね。つーか、「犯人たちの事件簿」でもネタにされてましたが、真犯人にとっては高遠のこの行動…迷惑以外の何物でもないでしょ。(苦笑)

 

今回の真犯人も、この高遠の傍迷惑な行為が原因なのか割と早々にボロを出してしまっています。しかも今回はハジメに加え明智警視もいる最強の布陣ですからね、仕方ないね。犯人像としても「美雪や警察関係者や佐木等を除外した"一番ハジメ達に立ち位置が近いキャラクター"」というのにモロにハマっているキャラクターですし、犯人特定という点では割と難易度が低いエピソードかも。トリックまで全て解明…となると難易度が高くなりますが。

 

さて、今回のメインは今までの高遠エピソードとは違いハジメと彼の対決というスタイルではなく、高遠の父親を巡る序章…といった感じになっています。殺人事件の舞台となった黄金町島中学校校舎…まるで完全犯罪の殺人に利用しろと言わんばかりのギミックを持った建物であり、それは高遠の本当の父親が建てたとされる薔薇十字館と同じ。校舎の改修を高遠がやったのではないとしたら、そこには高遠と同じ気質の誰か…即ち高遠の実父の存在が匂わされている…と。そういう意味では「R」シリーズでの高遠は今までと毛色が違う、と言えるかと。

 

あ、今回も例にもれずな気もしますが、登場する女性キャラクターは美人ぞろいです。特に廃墟探索部部長の室ノ井さんはおっとりお淑やか系の年齢に見合わぬ色気の持ち主。ただ廃墟部メンバーでも割と金への出着が強く、がめつい一面がありそうなのが玉に瑕。

ちなみに彼女の名前は蘭…「金田一少年」には同じく"蘭"という名前のキャラクターが割と多くて、殺され役だったり真犯人だったりと、彼女以外はあまり良い扱いではなかったりします。この扱いの悪さ…「金田一少年」のライバル作品のヒロインの名前というのが原因かも?

 

ちなみに明言はされていませんが、今回の事件はバックボーンとして東日本大震災があり、現実の出来事を題材としたのは「蝋人形城殺人事件」の三億円事件以来ですね。そして今回…音楽室突入時に剣持警部が拳銃を抜くんですが、コレが

 

New Nambu M60 revolver of the Nara Prefectural Police.jpg

ミネベア ニューナンブM60

 

写真と同じく7.7cmモデルでしたね。私服警官なら5.1cmモデルの方がリアリティあった気がしますが、銃好きの戯言ですね、コレは。生産は終了してますが未だに現役のニューナンブ…今時装弾数5発のリボルバーかよ!?と文句を言われがちですが、実はシングルアクションに限ってはこのサイズの拳銃としては非常に命中精度が高い銃なんだとか。一時、ニューナンブの名前が使えないので「ポリスリボルバー」としてリリースされているマルシン工業のガスガンを持っていましたが…一見安っぽい樹脂製のグリップが、日本人の体格に合わせているからなのか大変握り心地が良くてしっくり来るのが印象的だったんですよね。

 

 

今回の犯人 遠間もえぎ …犯人強度 40万パワー

可愛い顔して元不良少女。ネグレクト状態により荒んでいた所を教頭だった早坂に救われ、母の死後は彼に引き取られ大変深い感謝の念を抱いていた。震災の際は地元に帰っていて、早坂の身を案じ投下寸前の校舎に赴くも、そこで瓦礫に挟まれて身動きの取れない早坂を見捨てた3人の火事場泥棒を目撃…これが科犯行の動機。犯人としては早々にボロを出し、トリックも地獄の傀儡子によるものなので、優秀とは言えない。しかし最後の犯人指摘シーンでは高遠も認める程の演技力を披露している。

 

今回の高遠 65点

今回は狂言回し的なポジションなので、ボロが出難かっただけな印象です。

減点要素はないがだからと言って加点要素がある訳でも無し…といった感じ。

FILE.38 「雪鬼伝説殺人事件」

  • 2022.01.31 Monday
  • 21:44

はい、久々の「金田一少年」読み直し。今回から「リターンズ」に突入です。

そういやまた4月から「金田一少年の事件簿」の実写ドラマがスタートするんだそうで。今回もハジメ役はジャニタレの様で。まぁ、見ないんですけどね。(笑)

 

今回の事件の概要はこんな感じ。

 

怪我をした女生徒のピンチヒッターとして、来年冬に正式オープンするという高級リゾート施設「スノーゴブリンスキーリゾート」のイメージガール候補としてプロジェクトモニタリングに参加する事になった美雪。ハジメも邪な目論見からバイトとして同行する事に。リゾート開発の予定地である雪鬼ヶ岳にやってきた2人だが、この雪鬼ヶ岳にはある都市伝説が。かつて雪鬼ヶ岳には小さな村があり、なまはげの様な風習が行事として行われていたが、その行事の際に雪鬼(=なまはげ役)が村人達を惨殺。唯一生き残った12歳の少女が命からがら下山し助けを求めるも、警官と共に村に戻ると村には血の跡が残るのみで村人の遺体は全て消えており、雪鬼が村人を喰ったと噂が残ったのだった。

そして再び、雪鬼ヶ岳のリゾート予定地に集まる人々に雪鬼が牙を剥く…。

 

と、まぁ「金田一少年」ではお馴染み、孤立した雪山での殺人事件です。

物語としては、これまた「金田一少年」にはありがちな恋人を殺された復讐モノで、犯人の行動とは裏腹に犯人の亡き最愛の人は復讐など望んでおらず、最後も罪を認めた犯人が自殺しようとした所を、最愛の人の想いが宿った何かによって救われる…という、割とテンプレート的なエピソードだと思います。

 

まぁ、テンプレ気味とはいえ、犯人にとってかけがえのない最愛の人…2年前に自殺したと言われるアイドル・雪原さやかと雪鬼こと月見里の過去エピソードは彼が復讐に走ったのも無理からぬものではあります。「金田一少年」において犯人が凶行に走る事となった原因となった存在って、ホント聖人君主的な人格者で逆境、苦境にも負けない強い人物である事が多いですね。雪原さやかも正にそんな人物として描かれています。

 

さて、今回のポイントとしては2つ。それは、登場する女性キャラクターが美人ぞろいという点。

美雪とイメージガールの座を争うという体で登場した影平さんは勿論、チョイ役ですが、美雪にピンチヒッターを依頼した同級生の相馬さんもかなりの美形。モニターとして参加しているメンツも中々の美人ぞろいですが、これまたチョイ役ですがハジメ達のクラスの担任として…恐らく初登場かな?の吉長先生もかなりの美人です。

 

そしてもう1点…今回の事件はかなり大掛かりなトリック…今までの「金田一少年」でもトップクラスの派手な仕掛けで殺人をしている、という点。そもそも真犯人である月見里…金持ちCEOという事でやる事成す事派手、と言いますか…最後に自殺しようとした手段と言い、とても1人ではやれない仕掛けを組んでいる訳ですから、ホントに彼は雪原さやかの敵討ちが出来ればどうなってもいい、という思いだったのでしょうねぇ…。

 

ちなみにミステリとして考えると…最初の殺人…というより死んでいるとは明確にされておらず、死体が見つかるのもハジメの「謎はすべて解けた」の後なのでコレを解明するのは至難の業…というか、不可能かと。但し、犯人特定の鍵となるのは「金田一少年」では毎度おなじみの「犯人しか知りえない事関しての失言」なので、注意深い人なら気が付くかと思いますが、初見というか、連載時に読んで事件の全容、真相を完全解明するのはかなり難しいんじゃないかと思いますです、ハイ。

 

今回の犯人 月見里光 …犯人強度 500万パワー

大掛かりで派手なトリックもそうだが、今回のスノーゴブリンスキーリゾートという開発計画すら復讐計画の一端である、事を考えると、如何に金持ちを敵に回すと恐ろしいかが良く分かるというもの。恐らく彼は私財を全て投げうってでも復讐を敢行したのではないかと。「金持ち喧嘩せず」なんてよく言われるが、"怒った金持ちの喧嘩"というものが如何に恐ろしいかを体現した様な犯人。但し彼の行動は、彼が亡くした最愛の人の想いとは真逆だったのが悲しい。

FILE.37 薔薇十字館殺人事件+短編 暗黒城殺人事件

  • 2021.10.01 Friday
  • 17:41

はい、ご無沙汰な「金田一少年」読み直しです。

今回は「薔薇十字館殺人事件」…ハジメがライバルである高遠と共闘したり、謎に包まれた高遠のルーツが示唆される人気エピソードですが、高遠嫌いな私にとってはあまり興味深いとは言えない、というのが正直なところ。

 

地獄の傀儡子こと高遠の元に、存在しない筈の青い薔薇が添えられた挑戦状が届く。薔薇十字…ローゼンクロイツと名乗るその挑戦状には自分も何者か知らない高遠の異母妹が人質にしている事が書かれていた。その挑戦を受けた高遠はハジメに協力を打診。自ら大人しく自首する事を条件に高遠の協力依頼を受けたハジメだが…

 

という話。

このエピソードとして欠かせないのが彼女

 

月読ジゼル に対する画像結果

月読ジゼル

 

花を題材に歌を詠む彼女は初対面の段階であの美人に目が無いハジメにして「俺の苦手なプッツン系」(コモリウタコ系とも)言わしめる稀有な人。しかも彼女、ミスリード要因かと思いきやホントに犯人というパターン、かつ高遠の異母妹でもある…という属性過多気味なキャラクターです。

 

今回、いつもの「金田一少年」の常套パターンですと、いちいち言動がおかしくあからさまに怪しい彼女がミスリード要因で、ハジメとの関係が近しい白樹先生が真犯人、という形なのですが、むしろ手のひらに十字の火傷跡を持つ白樹先生の方がミスリード要因でしたね。しかし美雪さんよォ…

 

白樹紅音| 美少女數據庫| Fandom

白樹先生に対して「眼鏡でわかりづらいけど実はすごい美人」とは聞き捨てなりませんな。まるで眼鏡が彼女の美貌を邪魔しているかのような言い方…それは違うのです。彼女は

 

「眼鏡がとても似合うすごい美人」

 

なのですよ!!(断言)

 

まぁともあれ、今回はハジメと高遠の協力体制という事で、ワトスン役の美雪の影は薄い…かと思いきや、確かに探偵パートではさしたる活躍やハジメにヒントを与える様な言動はしていませんが、その分ドラマパートで見せ場が。白樹先生(と入れ違いでジゼルも)との入浴シーンもありますが、ハジメとの関係性がこれでもかと盛り込まれています。最たる例が高遠に協力する事を決めたハジメから危険な目に遭うかも知れないのに一緒に来てよかったのかと問われた際に返した

 

「はじめちゃんを一人で行かせてヤキモキ帰りを待ってるほうがあたしはよっぽどヤなの!」

 

なんて台詞など、もう完全に恋女房ですね。

 

さて、事件の方は螺旋階段を軸にした建物の角度のトリックというのは、建設業やってる身としては面白いな、と思いましたね。ただ…そんな建物立てるの大変だろうなぁ…とも思ってしまうのですが。

 

それと、今回の事件の構図…「悲恋湖」に似てますね。犯人が復讐に及んだ過去の出来事…って、コレに関してはシリーズ通して似た様な傾向はありますが、事件開始時点で復讐すべき相手が真犯人にも分かっていない点なんかがーはかなり近いですよね。まぁ、ジゼルは遠野先輩の様に同じイニシャルの奴皆殺し…みたいなキチガイではなかったですが。

 

んで、このエピソードの前に短編「暗黒城殺人事件」があるのでついでに紹介しときます。

 

美雪の持ってきた「暗黒イベント」なる催し物に一緒に参加する事になったハジメ。イベントで真っ暗闇にされた部屋で殺人事件が発生…閉鎖された暗黒の空間で犯人は如何にして相手を特定し殺害せしめたのか…というエピソード。

 

トリックが携帯電話から流したモスキート音を用いてターゲットの位置を特定した、というものなのですが、面白いのはその犯行を行ったのが殺害された男の13歳の娘、という点。

殺害された男・桐森は保険金詐欺の常習犯で、犯人である蘭も桐森の実の娘ではなく、保険金目当てに結婚し、自殺に見せかけて殺された被害者の連れ子。桐森の嘘から義父を疑った蘭は桐森が結婚詐欺で訴えられている事を知り、母を殺したのも桐森だと知って犯行に及んだ、というもの。

 

モスキート音を使ったトリックの都合か、13歳って設定がね、なんとも。

まぁ、現実にも10代前半で人を殺した例なんてのはある訳だけども、なんともまぁ…フィクションとはいえやるせない気持ちになります。

 

今回の犯人 その1 月読ジゼル …犯人強度 40万パワー

可愛らしい顔立ちの美少女なのに、ハジメから苦手意識を持たれた稀有なキャラクター。自分の異母兄が世間を騒がせる"地獄の傀儡師"である事で、今回の復讐決行に勇気づけられてしまったという不幸な人物。但し、「犯罪芸術家」の異母妹が犯罪の才能に恵まれているとは限らない。

…まぁ、異母兄の方も言い訳と屁理屈ばかりの「自称・犯罪芸術家」だしなぁ…。

 

今回の犯人 その2 桐森蘭 …犯人強度 85万パワー

13歳という若さで暗闇の中とは言え第三者がいる部屋で堂々と殺人を犯す胆力、更にモスキート音を使ったトリックを考案する等優秀な頭脳を持つという末恐ろしい少女。仮に今回、ハジメによってトリックを見破られず逃げおおせ、歪んだまま成長したら…地獄の傀儡師など目じゃない天才犯罪者になってしまったかも。

 

 

 

FILE.36 香港九龍財殺人事件

  • 2021.07.16 Friday
  • 21:25

久々の「金田一少年」読み直しです。

今回はたまたまアニメ版を視聴した事があったりします。

 

今回の事件の概要はこんな感じ。

 

香港で開催される「東京ガーリーモードイン香港」というファッションショーに出る予定だったモデルが行方不明になり、そのモデルとそっくりという事で美雪が代打に抜擢されることに。美雪はハジメと共に香港を訪れるが、観光の途中で美雪が誘拐されてしまう。美雪の捜索中、ハジメは本来ファッションショーに出る筈だった美雪そっくりの少女・楊蘭と出会う。彼女曰く、彼女の身体には九龍に眠る財宝のありかを示す刺青があり、ファッションショー出演からその刺青について尋ねられる事が多くなり怖くなって逃げたのだという。ハジメは美雪は財宝を狙う人物が蘭と間違えて美雪を誘拐したと推測。蘭の協力を得てファッションショーの関係者が集うタワーホテルに向かう。

 

基本的に「金田一少年」の舞台は架空の孤島やら村ですが、今回は「決死行」以来の海外。そしてトリックというか…犯人捜しは割と簡単な部類になっていますが、その分物語がダイナミックに動くエピソードなので、「金田一少年」のエピソードの中でも屈指の映像化に向いたエピソードと言えるかもしれません。そのせいなのか、「日本テレビ開局60周年記念」のスペシャルドラマになっていますね。

 

しかし、「悲恋湖伝説殺人事件」の遠野先輩が凶行に走る理由となった彼の妹・蛍子も美雪そっくり…という事で美雪と同じ顔のキャラクターは今回の楊蘭で2人目。世界には同じ顔の人が3人いる、なんて話もありますが…美雪さんったらそれを体現してしまいました。美雪はかなりの美少女、という設定な筈なんですが、そんな娘がそんなホイホイいるもんなのか?ちなみにアニメでは更にもう1人追加されているとかなんとか…どうなってんだ?(笑)

 

それと台湾警察の李白龍刑事が漫画版では初登場です。

アニメ版やドラマ版では時系列が漫画とは違っていて、アニメ版やドラマ版で他のキャラクターの代役として露出があるせいか妙に記憶に残っているんですが…意外でしたね、ええ。

 

ちなみに李白「竜」だと「シャーマンキング」や「竜虎の拳」に登場する別のキャラクターになってしまうので注意。(笑)

 

李白竜 龍虎 に対する画像結果

 

さて、このエピソードがダイナミックな展開を見せる…というのは、何と!このエピソードにおける九龍の財宝は実は核爆弾である事からだったりします。もう「金田一少年」というより「名探偵コナン」とか「相棒」の領分だよね、こう大掛かりになると。でもその大掛かりな仕掛け故、映像作品としては非常に向いているのかも知れませんが。

 

 

今回の犯人 楊蘭 犯人強度…75万パワー

自分にそっくりな美雪の存在を利用し誘拐を自作自演するというアイデアは突飛ではあるがユニークかと。但し、ダイナミックに動く展開と比較すると犯人としての凄みや個性は薄口かと。犯人としては平均点レベルが妥当か。

File35 人喰い研究所殺人事件

  • 2021.04.25 Sunday
  • 20:53

久々の「金田一少年」読み直しですが、今回のエピソードから「20周年記念シリーズ」となります。

初期のシリーズは読んでいたんですが、この辺になると読んだことが無かったエピソードが結構あるんですよね。

 

そんな訳で事件の概要。

 

ハジメと美雪の中学時代の級友・緑川繭。中学の時に家庭の事情で引っ越してしまった繭だが、その後も美雪とは連絡を取り合っていた。久々に彼女に会いに行く事になったハジメと美雪は吊り橋一本で下界から遮断された陸の孤島・仁久井村を訪れるが、そこは携帯電話も通じない昭和のまま置き去りにされたような村だった。再開した繭はその村の研究所の所長になっていたが、その研究所は繭の父をはじめ、何人もの自殺者が出たいわくつくの場所で、いつしか人喰い研究所と噂されるようになっていた。そして再び人喰い研究所で自殺者が次々と出て…

 

というのが今回のエピソードとなります。

お馴染み、引っ越し、転校でハジメや美雪と離れた友人が登場するエピソード。この手のエピソードではその友人役のキャラクターが殺されたり、はたまた犯人だったりするケースが多いんですが、今回の繭の場合はちょっと変化球かも。

 

何時もの如くなトリック無視なパターンから予想する…真犯人は美雪や剣持さんといった主要キャラクター以外でハジメに対し親密だったり協力的な言動をする人物…となると、今回は真犯人は繭かその部下にして兄替わりの存在・中神となり、案の定中神が真犯人。但し、繭が密かにブログに書いていた自殺に見せかけ父を殺害した者たちへの復讐計画を彼女を止める為に代わって実行に移した…という経緯であり、それを知った繭が逮捕された中神を支えていく事が示唆され前向きなエンドとなっております。

 

ちなみに、繭の父が発見したバイオ燃料を生み出す藻「無尽藻」を巡るトラブルが今回の事件の発端と言える2年前の繭の父の自殺…に見せかけた殺害だった訳ですが、これと似た状況が「相棒 season10」の第9話「あすなろの唄」で描かれています。こちらは細菌から重油とほぼ同じ成分の物質を精製する研究をしている科学者が、国内での研究開発に拘り外資から融資を受けようとする共同研究者を殺害した…という事件。昼間やってる再放送でも頻繁に流されるエピソードの1つですね。

 

繭の父親は自身の研究成果…権利を独占すれば膨大な富を築けるであろうそれを世界の為にネットで無料公開しようとして部下だった今回の被害者らに殺害されてしまう…どちらも立派で素晴らしい研究なのに、カネが絡むと醜い惨劇が生まれてしまう…というのは共通していますね。

 

さて、余談ですが今回…美人が多いエピソードです。

 

小鷹 美苗 に対する画像結果

 

先ずはハジメと美雪の中学時代の級友・繭。

中学時代はショートカットでちょっとキツイ印象のある美少女でしたが、たった2年でかなり大人びた印象に。

普段のキリっとした表情が笑うととても柔和な印象になるのがまた良いのです。眼鏡美人ですよね。

 

そして…

 

小鷹 美苗 に対する画像結果

 

研究員の小鷹さん。

この人もかなりの美人。出番が少なめなのが残念。

 

トドメに…

 

小鷹 美苗 に対する画像結果

 

被害者になる寸前だった谷瀬あやね。

2年前の殺人に直接加担はしていないものの、繭の父の死が自殺ではないと知ってカネの為にそれを黙っていた女。

でもビジュアルはかなり美人。

 

初期シリーズよりも女性の描写がこう…可愛くなってますね、ええ。

 

後、「無尽藻」もそうですが、村では癌に効果があると言われるキノコがあったりして、どちらも村から出ると育成しないとかなんとか…凄い村ですよね。トンデモ設定と言えるかもしれません。(笑)

ついでにハジメがカラオケで歌ったのはドラマ版「金田一少年」の主題歌だったりしますね。

 

さて、今回のエピソードですが…犯人は勿論解明されますが、答えが明かされない謎が1つ残っています。それは中学時代に繭からハジメに出題された暗号です。最後にヒントとして「出席番号順に並んだ座席表」が提示されますが、答えそのものは描かれていません。コレ、暗号文に書かれた人物の出席番号から指定された数を引き、それをアルファベット順に当てはめていくと答えが出ます。まぁ、書かれている内容については暗号を解いたハジメのリアクションで分かっちゃうんですけどね。

 

今回の犯人 中神深志 犯人強度…100万パワー

犯人特定は割と簡単なれど、実はトリックを解明して謎を解こうとなるとかなりの難敵。彼が犯行に及んだのは彼自身の憎しみも然る事ながら、自分の大切な人が凶行に走るのを止めたいという思いもあった筈。その思いを受け、事件後も支えてくれる存在がいる事は彼にとって大きな救いになるのではないかと。

 

File.34 ゲームの館殺人事件

  • 2020.12.22 Tuesday
  • 22:02

久々の「金田一少年」です。

今回のエピソードはこんな感じ。

 

商店街の福引で大当たりしたハジメと美雪は友人らと遊園地にやってくる。しかしひょんな事からハジメと美雪が他のメンバーとはぐれてしまう。宿泊先に向かおうとシャトルバスに乗ろうとした2人だが、お金が足りないことに気づいて仕方なく歩いて向かう事に。しかし途中で美雪が足を痛め、大雨まで降ってくる始末。そこに偶然通りかかったバス。何とか頼み込んで乗せてもらう事になったものの、2人はバスの中で眠り込んでしまう。

2人が目を覚ますと、他数人の人物と海賊の仮面を被せられて廃病院に閉じ込められてしまっていた。そこでハジメ達はゲームマスターを名乗る人物により命を懸けた廃病院からの脱出ゲームに参加させられる。

 

今回の「金田一少年」は今までのエピソードとは毛色が違っていて、閉ざされた洋館などで殺人犯とそのトリックを解き明かしていく…というスタイルではなく、所謂デスゲーム的なものに巻き込まれたハジメと美雪がそのゲームに生き残りながら、ゲームマスターの正体=真犯人を探っていく…というスタイルになっているのが特徴。

 

何時もの犯人捜しとトリック崩しの他、デスゲームの仕掛けの解明という2重の謎解きがある…というユニークな試みてせはあるんですが、犯人特定の鍵自体は今までの「金田一少年」でも多く採用されている犯人の"失言"なので、気が付きさえすれば犯人の特定は容易かと。ただ、デスゲームと殺人トリックと言う2段備えのエピソードなのでボリューム自体は短めの1本ですが、面白さ、満足度は高いんじゃないかと。いつもの「金田一少年」の面白さとは少しばかり違う形ではある訳ですが。

 

何時もの「金田一少年」としても面白いエピソードですが、犯人の仕掛けたデスゲームを通じてハジメと美雪の関係が一歩進んだんじゃないかな?と思わされてしまう描写が多い点にも注目。互いが互いを大切に思っている…という部分が、死の危険が付きまとうデスゲームのおかげで際立っています。

 

そしてこの人。

 

菊川梢さんです。

 

彼女が幼い頃に女手一つで彼女を育てていた母親が借金苦で自殺しており、当然「相続放棄すれば親の借金を背負わずに済む」事など知る筈もなく親の借金を抱え込んでしまっています。しかも自身も悪い男に貢いだりした為に自己破産も出来なくなっているどん詰まり、地雷の様な境遇の女性。

しかも今回の真犯人、生きていた彼女の母親。大富豪の遺産相続を狙ってのもので、偶然再会した娘が苦労している様を見て、自分が遺産をを受け継ぎそれを彼女に継がせるため…というモノ。

 

しかし彼女はひょんな事から相続した遺産の全てを身寄りのない子供達の為に全額寄付、母親の借金は自分か働いて返す、と。

自身も十二分に不幸なのに駄目な男を引き寄せる…地雷の様な彼女かと思いきや、とても強い女性だったのです。

 

 

今回の犯人 麦林美佳 犯人強度 65万パワー

本当の名は菊川早苗。夫と離婚後、女手一つで娘・梢を育てていたが、経営していた会社が倒産。樹海で自殺しようと彷徨っていた所で本物の麦林美佳の死体を発見し、彼女に成り代わる。麦林美佳として生活している中、偶然娘と再会。娘の窮状に親としての責任を感じていた所、元夫が会社社長の霜村志保と結婚して子供をもうけた後死去していることを知り、この犯行に走る。

一応自分のせいで苦労を掛けている娘の為、という大義名分はあるが、麦林美佳に成り代わった事や霜村親子含め多くの無関係な人を巻き込んだ身勝手かつ卑劣な犯行である事に変わりはない。事件後の娘・梢の言動だけが救いだろう。

 

File.32 剣持警部の殺人

  • 2020.08.09 Sunday
  • 22:15

はい、久々の「金田一少年」読み直しです。

今回の事件のあらましはこう。

 

3年前に発生して世間を騒がせた女子高生死体遺棄事件。この被害者は剣持警部の知り合いだった。少年法で保護された犯人の少年は逮捕されたものの、うち2名は鑑別所を既に出ており主犯格のもう1人も出所となった。しかし最後の1人、主犯格の男が出所後すぐに銃撃される。幸い大事には至らなかったものの、使用された拳銃は警察で使われているもので、その持ち主は剣持警部と判明。死刑執行人と名乗る人物が女子高生死体遺棄事件の犯人に刑を下していく中、事件前から失踪中の剣持警部が有力な容疑者とされてしまい…。

 

というモノ。

「女子高生コンクリート詰め殺人事件」をモチーフにしたであろうエピソードですが、この事件、犯行を行ったのが10代の少年であり、その事件の残虐性も然ることながら、少年法の存在意義に大きく疑問を投げかけるかなりセンセーショナルな事件だった訳で、フィクションこの「金田一少年」に限らずしばしモチーフにされていますね。

 

 

実写化されたものの主演俳優が強制性交容疑で逮捕された事でお蔵入りになった事でも有名になってしまった「善悪の屑」…有名なこの台詞も、「女子高生コンクリ詰め殺人事件」がモチーフのエピソードで出て来る台詞です。

 

しっかしモチーフになった事件同様、「剣持警部の殺人」も中々に酷い事件です。主要登場人物が揃いも揃って胸糞悪くなる奴等ばかり。

 

殺された2人は今回の犯人である毒島が主犯とされた事件の本当の主犯であり実行犯。その事件の被害者・十神まりなに暴行してその罪を毒島に押し付けた。

彼等を弁護した弁護士は娘の病気の件で多間木に弱みがあったとはいえ、毒島の告発を握りつぶした湖森。

事件の復讐の為に刑事になった十神の恋人・青井は刑事でありながら機会があれば毒島の殺害を狙っていた。

 

3年前の陣ではある意味冤罪を背負わされた犯人の毒島は確かに不幸ではあるが、剣持の言う通りどうしようもない流され屋で、そのせいで十神まりなを救う事が出来なかった。

犯人にスケープゴートとされた剣持にしても、そうなった原因は彼が結果的に生み出してしまった冤罪。

 

…救いがたい事件です。推理云々考えるのすらウンザリしてしまうレベル。

唯一、3年前の事件の被害者である十神まりな…彼女の聖人君子な人柄だけが救いかも。尤も、彼女のその善良さがより事件のいたたまれなさを高めている気もしますが。

 

あ、今回の事件でも黒幕的に「地獄の傀儡子(笑)」がしゃしゃり出てますが…相変わらずなので特に語る価値もないかと。

 

今回の犯人 毒島陸 …犯人強度 98万パワー

3年前、好意を持っていた女性…十神まりなを救えず、あまつさえ彼女を死に至らしめた2人と彼女の遺体を隠匿した男。本人も少なからず自覚している節はあるものの、そんな男が復讐とは片腹痛い気はする。しかしその一方で犯行に関しては案外隙が無い。

弱い人間である彼だが、監禁、乱暴され精神的に追い詰められた状態で尚、彼の身を案じ続けた十神まりなの残した"想い"を知った事で弱さに向き合い真っ当になる道は残されたと思う。

 

今回の高遠…5点

コイツ、ライバルというより「プライドが高いだけの迷惑な愉快犯」だと思うんだよな。彼のファンが言う様なダークヒーローではないよ、断じて。

File.31黒魔術殺人事件

  • 2020.06.20 Saturday
  • 23:10

さて、久々の「金田一少年」読み直しは「黒魔術殺人事件」です。

また、"あの男"の登場です。

 

邪宗館殺人事件(小説版のエピソードみたいです)で一緒だったハジメの旧友で現在はコンピュータ関係の会社を起業している井沢研太郎から連絡で、彼のクライアントである火祀コーポレーション社長の事故死の真相を究明を頼まれる。その社長は嵐の夜に電車に轢かれ、胴体が真っ二つになり死亡しており、警察は事故死として処理していた。しかし社長の死の数日前、火祀家の別荘にある鉄道模型の線路に社長の死と同じく胴体から真っ二つにされた呪いの人形が発見されていた。ハジメと美雪は井沢の案内で火祀家の別荘、通称「葡萄の館」を訪れるが、そこで呪いの人形を見立てた殺人が発生し…

 

…というモノ。

今回の事件の面白い所は、大抵の「金田一少年」のエピソードではあからさまに怪しい風貌だったりする人物や本当は存在しない人物なんかが読者のミスリードわ誘うあからさまな罠として配されているケースが多いんですが、この「黒魔術殺人事件」では"自分が殺した"と半ば名乗り出ている様な人物がいる点。それが

 

火祀星子です。

 

全員血のつながりがない火祀家の長女。一見優し気なお姉さん…という感じですが、黒魔術で家族を呪い殺そうとしているという…我らが森宇多子さん的なオカルト系キャラクター。勿論彼女が犯人な訳はないんですが、彼女自身は次々と怒る殺人事件は全て自分が黒魔術の呪いで殺したものと信じているのがキモ。そして彼女をそう思わせているのが、そう…「地獄の傀儡子(笑)」こと高遠です。

 

実は真犯人の井沢に火祀家への復讐に走らせたのも高遠で、星子をそそのかしているのも高遠。そもそも井沢に近づき、井沢にの過去の真相を知り彼を復讐に仕向けた理由は恐らくハジメ。そういう意味で言えば、井沢や星子がどうなろうと知った事ではなく、

 

GoogLuck名探偵!私の完全犯罪の前で「苦い現実」を嚙み締めるがいい!!

 

という彼の言葉、高遠の言う「完全犯罪」とは、自分の存在を匂わせつつハジメを不幸にする、という事なのではないかと。最早、ストーカーです。でも結局、コッチの意味でも高遠はハジメに負け…でしょうね。犯罪に走った友が更なる凶状に走ろうとしたのを文字通り体を張って止め、井沢の悪意を憑き物が落ちたように晴らしたハジメの方が一枚上手ですよ、ええ。

 

つうか高遠さんよォ…天才犯罪者等と言われてますが、捕まりそうになっては逃げ出し、追い詰められたら死んだふり、投獄されたら抜け出し…って、やってる事ほぼ

 

これと変わらんだろ、あんまり。(笑)

 

まぁ、今回は良かった部分もあるんだけども、基本カッコ悪いしせこいし…ライバルとしては失敗キャラクターにしか思えないんですわ、高遠。

…でもその割にミョーに人気はある訳で。まぁそれと同じくらい嫌われている気もするんですが。

 

 

今回の犯人 井沢研太郎…犯人強度 35万パワー

千家や島津と同じく、ハジメの友人という以外に正直あまりインパクトがない。犯行もほぼプランは高遠のものとすると、犯人としての魅力は低めな印象。

 

今回の高遠 40点

相変わらずな、クワトロ大尉の正体ばりにバレバレな変装…もう少しやる気見せた方が良いんじゃないか?カッコつけたつもりの台詞も空虚と言うかなんというか…同じ「GoodLuck」でもホセのそれとは大違いだわ。

ただ、今回正体が暴かれるのを察して別人を仕立てる…という一矢報いたシーンがあったからオマケで加点。

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