さて、久々の「金田一少年」読み直しレビューですが、今回は「魔術列車殺人事件」…そう、この後幾度となく登場しハジメを悩ませる終生のライバル?…地獄の傀儡師・高遠が初登場するエピソードです。なんせこの男、「金田一37歳」でも懲りずに犯罪に手を染めているんですから相当性質が悪い。
エピソードの概要はこんな感じ。
「地獄の傀儡師」と名乗る人物から警視庁に脅迫状が届く。中身は、「4月28日、北海道は死骨ヶ原湿原を通る列車に魔法をかけた」というモノ。そのメッセージに当てはまる寝台特急・銀流星に乗り込んだハジメ達だったが、そこには有名な幻想魔術団のマジックショー開かれていた。朝食を食べながらマジックを観覧するハジメ達だったが、その時、剣持警部のポケットにいつの間にか入れられていた携帯電話に「地獄の傀儡師」から列車に爆弾を仕掛けたという着信が入る。
マジシャンという職業って、ミステリーとかでよく使われる題材な気がします。この「金田一少年」にも度々登場しますし、ハジメ本人が手先が器用で手品の心得がありますが、ハジメと同様探偵役が特技として手品を…なんてのは割とよく見る気がします。例えばアレをミステリーと呼ぶのかはさておき、ドラマの「TRICK」なんかはもうそのまんま探偵役が"売れない"手品師ですし、逆に舞台装置とか犯人側、という形でも少なくない気がします。まぁ、はっきり覚えているのは「逆転裁判」の或真敷一座とか、「相棒(及川)」の中村有志さんが出ていたエピソードなんかもそう。真相や真犯人という「謎」を追うミステリー作品に対し、タネや仕掛けという「謎」をはらむマジシャンという題材は、親和性が高いんでしょうね。
さて本題。まずは冒頭、ちゃっかり金田一家で朝食を食べる明智警視…なんでも数々の事件を解決に導いたハジメに警察から感謝状が贈られる事となりますが、ハジメはその席ですっころんだ表紙に持っていたアダルトビデオをビデオデッキに差し込んで再生してしまう…というトンデモナイ事故を!!
…どんな偶然の重なりがあってそうなるのよ!!(笑)
ハジメが解決した数々の難事件より、よっぽど難解だと思いますわ、コレ。
百合子先輩もこう言ってるしな!!
んで、感謝状は無かったことになってしまうものの剣持警部の誘いでハジメは警視庁の美人婦警さんたちとの飲み会に参加する事に。その席で婦警さんたちは率先して高校生のハジメに酒を勧めていますが…いいのか?コレ。
連載時はまぁ、まだ今よりかは幾分おおらかだった気がするので許されたのかもしれませんが、コンプライアンスがどうたらと五月蠅い昨今ではコレ…下手すると炎上案件だよね。
…いや、描写云々を非難したいのではなく、嫌な時代になったな、と。(苦笑)
風船を使ったトリックとか、電車を止める事で可能にした死体の移動等、トリック面は凝っていますし、犯人逮捕後も続きがあって、最後の犠牲者が出る…といったのも新機軸なんですが…高遠のキャラクターにあんまり魅力を感じないんですよね。天才マジシャンだった実の母が殺された…殺害したのが彼女のマジックのアイデアを盗み出したかった弟子たちだ、という事に気が付いたからその復讐…というのまでは分かるんですが、そこからどういう風に殺人コンサルタントみたいな人間になったのか…が正直、よく分らんのですよね。
まぁ、実の所連載時とかに「金田一少年」を全エピソード読破した訳ではないですし、スピンオフ…例えば明智警視とか高遠の奴とかは全然読んでないのが原因なのだとは思いますが…なんだろ、高遠が絡まないエピソードの方が面白く感じるんですよね。地獄の傀儡師が絡むと全て原因がコイツになっちゃうって構図は、まるで
何でもかんでも人類滅亡に繋げちゃうこの人みたいなんだもの…って、この人が絡んでるんだけどね、「金田一少年」も。(笑)
この人みたいでもあるね。(笑)
そういう訳で、「金田一少年」のファンには人気あるエピソードなのかも知れませんし、トリックとかは私も好きなエピソードではあるんですが…どうも高遠が好きになれない私には、ややビミョーな気がしてしまう一本ですね、ええ。
あ、余談ですが…高遠の逮捕後、左近寺が最後にマジックを披露する直前、客席に「ガンダム」のシャアとセイラさんが描かれているコマがあります。暗転しているシーンでの描写なので分かり難いんですが、キョーミある人は探してみて下さい。
今回の犯人
高遠遙一 犯人強度…100万パワー
地獄の傀儡師。ハジメにとってはライバル的存在になるキャラクター。
以後の殺人事件でも事件の裏で暗躍し、ミスをした犯人に容赦ない死のペナルティ与える事が多い。
でもその割に自分自身の犯罪であるこの事件では凡ミスを犯していたりする。
ホントに希代の犯罪者なのか?コイツ…。