イイ女(妖怪だけど)
- 2023.03.12 Sunday
- 10:55
いやいや…しばしウチでも話題にしている漫画、「虚構推理」ですが、世間からのアニメの1期の評価はあまり高いものではなかった様で、それに関し私は雪女のエピソードやんなかったからじゃないか?と書いた訳です。
…2期の早々に「雪女のジレンマ」やったんだそうで、直後からyoutubeとかでもオススメ動画に「『虚構推理』の雪女がカワイイ」なんてのが結構出て来るようになりやがりましたわ。(笑)
そんな訳で、今回は彼女
「虚構推理」より 雪女
はい、ある意味アニメ版「虚構推理」の評価をその魅力でひっくり返した…と言えなくもないヒロイン力の持ち主、雪女さんです。
そんな彼女は「雪女のジレンマ」というエピソードに登場します。
登山中、恋愛関係のもつれから親友に崖に突き落とされた室井昌幸は一命はとりとめたものの、全身を打撲し崖をよじ登る体力はない…正に絶体絶命。そこに現れたのは白い装束を着た女。死に際の幻覚だろうと思っていたが、その女は妖怪の雪女を名乗った。遭難者が出ると山が騒がしくなり、下手をすれば事故がキッカケで開発が進んでしまう…そして自分が人里に下りた時に必要な金を対価として昌幸を助けた雪女は、自分の事を人に漏らすなと言い残す。
数年後、起業して結婚もしたが妻に浮気され離婚、会社も仲間から裏切られ追い出された昌幸は人間不信に陥り、雪女と出会った山のふもとに一軒家を買ってひっそりとした生活を始めるが、そこで人里に下りて来ていた雪女と再会する。しかし昌幸が雪女との奇妙な生活に安らぎを感じ始めた頃、別れた元妻が何者かに殺害され、その嫌疑が彼にかかる事に。
…というのが、「雪女のジレンマ」というエピソードの概要。
先日「虚構推理」をネタにした際にも書きましたが、彼女は「雪女を斬る」で再登場する他、コミックス巻末のオマケで昌幸とのその後が描かれていたりします。
さて、雪女さんの魅力ですが…スレンダーながら出る所は出ているスタイルの良さだったり、さらりと伸びた長い黒髪であったり、透き通っているかのような白い肌であったりとか、口元から見える八重歯(牙?)であったりとか…外見的要素も勿論ではあるのですが、何と言ってもその内面ではないかと。
先ず、崖から突き落とされた昌幸を助けた際に、彼に手持ちの金の半分を要求します。
なんでも彼女、妖怪でありながら人間の作る食べ物が大好物で、それを得るには金が必要。いや、妖怪なんだからこっそり奪い取る手段と課が無い訳ではないが、そうしてしまうとその店が潰れてしまいかねないし、何より人と人外との断りを乱す事になる。だから昌幸のような状況の者を助けた際に、その対価として金を得ている…とまぁ、この書き方だと帰りの電車賃だけは残してくれるカツアゲヤンキーの優しさみたいではあるんですが、人として真っ当な思考の持ち主なのです。いや、妖怪ですけどね。
この時に限らず、昌幸と再会した際も離婚して会社から追い出されたという彼の身の上を聞いた際には彼が暮らしに困窮しているのならそんな相手にはたかれない、と…彼女に比べれば最近の人間の方がどうかしている、と思えるレベルで真っ当なのです。
いや、真っ当なだけなら彼女がヒロインとして魅力的だと言うのは大仰になってしまいます。
でも彼女…性格まで可愛いんですわ、ええ。
まずコロコロと良く変わる表情…良く笑い、普段の表情とはうって変わったその何とも子供っぽい…人懐っこい笑顔は見ているこっちまで笑顔にさせられそうな…実在したら、気が付くと周囲に人が集まって来るような、そんな笑顔の持ち主。その飾らない、気取らない性格なんとも魅力的。それでいて多くの雪女の伝承と同じように非常に情が深い女性でもあるのです。昌幸が元妻殺害の嫌疑をかけられた際も、半ば捨て鉢となり自身の無実を自身の手で証明しようと暴走しかける彼を
本気で怒り、止めます。
自分は昌幸の潔白を知っているし手を貸す。だから1人で結論を急ぐな、と。
…男の暴走を本気で怒って止めてくれる…ホントのイイ女だと思うんですよ、コレ。
かくして2人は知恵の神たる"おひいさま"に助けを求める訳ですが、ここで彼女に突き付けられたのは、昌幸が自分に向けられている彼女の情を利用し、彼を貶め裏切った元妻や会社の連中へ復讐しているのではないか?という疑念。味方だと思っていた…昌幸の疑念を間違う事なく晴らしてくれる筈の知恵の神から出た言葉は逆に昌幸に嫌疑として降りかかり、更に窮地に…
ココからですよ、ええ!!
敬愛し、尊敬している知恵の神に対し、体を震わせながらも逆らって見せるのです。ただ、昌幸の為に!!
コレがイイ女じゃなかったらなんだ!!…って話でしょ、ええ!!
恐らくはこの時…彼女の脳裏には知恵の神への絶大な信頼と、それを否定したい自らの心の葛藤の他、昌幸が自分の情を利用しているのでしないか?という疑念もあった筈。何故なら、おひいさまに相談しようと持ち掛けた際に発した自身の言葉の数々が、ある意味知恵の神の発した、否定したい…信じたくない「自分は利用されている」という言葉を証明してしまいかねないものだったから。それでも彼女は昌幸を信じ、絶対である筈の神の言葉を否定したのです。
…まぁ、コレも実は雪女と昌幸の関係を前に進めさせる琴子の"虚構"だった訳ですが。
昌幸側だけでなく雪女にも間違いなくあった筈なんですよ、昌幸との関係に対して自身で引いていた一線が。何しろ彼女は妖怪でありながら、人と人外との理を重視する性格…彼女が昌幸を床に誘う様な描写もありますが、実は彼女は昌幸がそれに乗ってこないというのは分かっていた…いや、むしろ乗ってきたら殺していたかも知れません。そんな彼女が昌幸との関係に神からお墨付きを貰えた…どころか、むしろ背中を押された訳ですから
こんな笑顔にもなろうというもんですよね。
…「雪女を斬る」によると、雪女は本当に大切に想う相手にしか名を教えないんだとか。
そうなると、昌幸はいつか雪女の名前を聞く事になるのかなぁ…と。