人間賛歌は「勇気」の賛歌

  • 2023.12.17 Sunday
  • 19:12

今回は彼です。

 

川尻早人 に対する画像結果

「ジョジョの奇妙な冒険」第四部より 川尻早人

 

幽波紋…スタンドという斬新な能力により、ただの殴り合いではなくルールや条件が伴う能力を駆使した緊張感あふれる頭脳戦を展開したのが「ジョジョの奇妙な冒険」の第三部…後年つけられたサブタイトルで言えば「スターダストクルセイダーズ」な訳です。仇敵・ディオが滞在しているというエジプトに向かう承太郎一行と、ディオの命で彼等の抹殺を目論む刺客達との緊張感あるバトルからシリーズでも随一の人気を誇っております。

 

そして承太郎達の旅路が完結した後に開始した第四部…「ダイヤモンドは砕けない」は旅モノだった第三部とは打って変わり、杜王町という地方都市を舞台にした街モノというスタイルになりました。

 

第四部が第三部と大きく違う所は、中盤までは明確な"敵"の存在しなかった点でしょうか。第三部ではエジプトまでの旅路で何度も刺客の襲撃に遭う…という命がけの戦いが続きましたが、第四部では状況的にやむなくだったりで仗助達を積極的に狙ってくる事もなく、バトルモノという観点で言えばスケールダウンしている風に感じる展開が続きます。互いに引かれあう…というだけあってか杜王町には様々なスタンド使いがいたり現れたりしますが、殺人などの重犯罪を行っていたのはラスボスである吉良吉影含め数人しかおらず、トニオや辻彩の様に基本無害なスタンド使いも多くなっています。それでいて仗助以上に主人公的なキャラクターの康一をはじめ、相棒的な億泰、前々作主人公のジョセフや前作主人公の承太郎、実はキーキャラだった岸部露伴といった仲間側の戦力が非常に充実していたりします。それ故、バトルの緊張感が薄れた、だの敵のスタンド使いが総じて強くない、的な批判も受けたんだとか。

 

そんな批判を受けたうえで登場させたのが、第四部のラスボスである吉良吉影。

歪んだ性的嗜好から手のキレイな女性を何人も殺め、その手としばらく生活するというサイコパスながら、自身は注目を浴びる事を嫌い、静かに、平穏に生きる事を望む…という非常に狡猾なキャラクター。

 

自身の秘密を知った重ちーを殺害した事で、その犯人捜しに躍起になる仗助らに追い詰められ重傷を負うも、たまたま遭遇した自分に背格好が近い川尻浩作を殺害、辻彩の能力で成り代わる…この川尻浩作の息子こそが、川尻早人です。

吉良が浩作に成り代わる前は妻・しのぶとの関係は冷め切っており、その子供である早人は「自分は愛し合う両親から生まれたのか?」という疑心暗鬼に陥っていた様で、両親の部屋を盗撮、盗聴していたという…少々歪んだ小学生…そう、"小学生"なのです。

 

吉良が浩作に成り代わってからは夫婦関係は修復…家族間は円満になったものの父親の変貌に強い違和感を感じていた早人は、両親を盗撮していた事で吉良の殺人の瞬間を目撃してしまう。そこで彼は「殺人鬼が父親になりかわった」事を確信、母を守る事を決意します。しかし行動を不審に感じていたのは吉良の方も同じ。問い詰められ窮地に陥った早人は「殺人の証拠を隠している」と逆に吉良を脅迫、母と自身に手を出すなと告げるも逆上した吉良により殺されてしまいます。

 

早人を殺めた事で深く絶望した事が引き金となり、吉良は"バイツァ・ダスト"なる新たな能力を得る…これは簡単に説明すると、「時間を爆破して不都合を『無かった事』に出来る」というトンデモ能力。時間が巻き戻り生き返った早人は、この時点で吉良の正体を暴こうとする物を爆死させ時間を巻き戻す爆弾とされてしまった。勝利を確信した吉良は吉良は彼に停戦という名の隷属を提案…。

 

早人は繰り返される時間の中で、偶然出会った仗助達が自分から吉良の情報を聞き出そうとして爆死する運命である事を知り、一度でも吉良について自分に聞いた者は巻き戻された後に吉良について聞かなくとも爆死する事、吉良の正体を探るものが爆死した後に吉良がバイツァ・ダストを解除したら爆死した者は死が確定してしまう事を知る。即ち、吉良が死ぬか、仗助達が爆死する前にバイツァ・ダストを解除させるしかない…。早人は祈ります。

 

「どうかぼくに人殺しをさせてください」

 

しかし猫草を使っての吉良殺害を果せなかった早人…そんな早人が時間を繰り返し自分の行動を邪魔し続けていた事を確信した吉良は、仗助達が爆死した後にバイツァ・ダストを解除すると宣言、勝ち誇る吉良だったが…

 

…ここで逆転劇が。

刑事ドラマなんかでよくありますよね?ラストで刑事が犯人と対峙し、犯行が犯人のものである事を証明していくも具体的な証拠は何もない。そこに犯人が気づき「自分が〇〇を使った証拠はあるのか」的な事を言って勝ち誇るも、実はそれが犯人しか知りえないワードで、「私は犯行に使われたのが〇〇なんて一言も言っていないし、マスコミなどにも伏せられている情報だ。それを知っているのは我々か犯人だけだ」…と、いう奴です。

 

コレに似た作戦を早人は実行するのです。何度も繰り返した時間の中から情報を集め、トライ&エラーを繰り返し、どうすれば吉良を止められるか、母親を守れるのか…幼いながらも必死にもがき、この状況に持ち込み…運命に勝ったのです。

そしてようやく仗助達と吉良の直接対決にまでこぎつけた後も、早人はクレイジーダイヤモンドの能力があるとはいえ、自らの命を省みない勇気を見せ、億泰に

 

「おめーのそのブッ飛んでる根性…プッツンしてるぜぇ〜川尻早人 まじに小学生かよ…小僧〜!!」

 

と言わしめる程。

そう、ジョースターの血統でもなければスタンドや波紋といった能力を持たない…どこにでもいる様な小学生が、極めて用心深く狡猾な殺人鬼の正体を暴いたのです。事件解決後、父親のとなった鞄を抱きしめる小さな背中に、仗助達も何も声をかけることが出来なかった…吉良を止めはしたが、達成感や高揚感などありはしない哀しい勝利…愛する夫に殺人鬼に成り代わっていた事など知る由もない母と共に、決して帰らないパパを共に待つ早人の姿が堪らなく切ない。

 

でもこれだけは言いたい。吉良を止めたのは早人の「勇気」だ、と。

 

川尻早人は言ってみれば脇役…しかし第四部のクライマックスでは間違いなく仗助よりも主役然とした活躍を見せるので「主人公列伝」カテゴリにしています。荒木先生言う所の「人間賛歌」というテーマがシリーズでも非常に色濃く出ているのが、彼なんじゃないかと思うのです。

臭い物に蓋をせず描く矜持

  • 2023.11.12 Sunday
  • 20:41

アメコミの世界ではスーパーマン(正確には力を受け継いだ息子)がゲイになってしまったり、洋ゲーではヒロイン各の女性の見た目があんまり見雌麗しいものではなくされてしまったり…と、所謂フィクション世界での"ポリコレ"という奴の悪影響というのがありまして、制作陣はこれが"アップデートされた正しい価値観なので御座い"的にドヤ顔をする一方で、今まで熱心に支えていたファンサイドからは「余計なことしやがって」という反発ばかりが目立っている印象を受けます。まぁ、個人的に"そう見える"というだけですけども。

 

その流れからはある意味外れているというか、積極的ではなかった為に逆に日本の漫画やアニメが"そういった流れ"に不満しかない人に支持されるという現象も起きているとかで、更にそれに反発して

 

「日本の漫画アニメはポリコレに配慮していないからケシカラン」

 

的な事を騒ぎだしている人もいるとかいないとか。

 

多様性を認め、偏見や差別を無くす為に政治的、社会的に公平かつ中立な表現を用いることがポリコレ…目指すところが偏見や差別をなくす、という事なのであれば、「日本の漫画アニメがポリコレに特に配慮せず物語を作る」というのも多様性の一つであり、それを無下にケチつける事は偏見による差別だという事にはならないのか?と。

 

…そこで、記事のタイトルですよ。

紹介するのはこのキャラクター。

 

漫画「RED」より レッド

 

村枝賢一さんというと、「仮面ライダーSPIRITS」というイメージが強いかもしれませんが私的にはコッチ。

アメリカの西部開拓時代を舞台とした復讐劇で、彼はインディアン戦争で虐殺により全滅した部族の生き残り。旅芸人として生計を立てていたが、ある町で部族の仲間を虐殺したブルー小隊の1人を見つけ壮絶な復讐の旅を開始する…という物語。その最大の特徴が、復讐劇の道連れがネイティヴアメリカン…劇中の表記ではインディアンであるレッドを筆頭に、日本人(アジア人)、娼婦…後半ではインディアンの少年と訳アリの少女、言葉を発せられない黒人と同性愛者の黒人…という、当時…いや、一部では現在も被差別者である、という点かと。

 

"ホワイトリバーの惨劇"を巡る回想シーンなど、女子供すら売り飛ばす為に切り刻む…という胸糞悪くなる様な描写がありますし、冒頭では白人が当たり前の様に行う黄色人種…要はアジア人に対する差別的言動というのも描かれています。その他、特殊な身の上、立場故いじめに遭うスカーレットだったり、当時のアメリカでは当たり前だった奴隷についても少し触れられていたり…と、壮絶な復讐劇やハードなアクションシーンの裏で、虐げられるものの苦しみや悲しみ、そして怒りを描いている作品なのです。その筆頭が、作中で最もキツイ悲劇を過去に持つ主人公、レッド…という訳で。

 

そう、「RED」という作品にはポリコレバカ共が主張する

 

「多様性を認めろ」

「弱者の権利を認めろ」

「差別主義反対」

 

というモノを強引かつ直接的な主張無しに、文句ないエンターティメントという形で描写している作品なのですよ。

 

いや、別に「RED」が特異なのではありませんね。故・白土三平氏の「カムイ伝」も被差別部落民が主人公で、封建的身分制度からの脱却しようとする人々を描いています。そしてどちらの作品も説得力を増す為に脚色はありますが史実をきちんと取り入れている作風でもあります。エンターテイメントの矜持を保ちつつ、それに逸脱しない形で主張しているこれらの作品に比べると…言っちゃあなんですが昨今のポリコレで改変された作品群ってのは「臭い物に蓋」をしているだけ、もしくは「送り手の自己満足」でしかないのではないか?とすら。

 

さて…レッドですが、彼…当初は旅芸人としての小道具でもあったバカでかい斧と鉈の様なナイフのみで戦います。そう、西部開拓時代を描く西部劇なのに、銃を使わないのです。その代わり、仲間となる伊衛郎やアンジーがガンアクションを見せる構図になっていて、特に伊衛郎の狭間筒と呼ばれる2m越えの火縄銃を用いての神業的な狙撃は見せ場も非常に多かったりします。

 

中盤以降ではグレイから渡されたS&W M03A7"HATE SONG"….45-70ライフル弾を発射するオートマチックリボルバーで、時代的には大分オーパーツ的な架空銃ではありますが、コレがね…カッコいいんですよ。非力な者が撃てば肩が外れる程の凄まじい反動で、排熱をあまり考慮していないのか連発すると熱でグリップに皮膚が固着してしまったり…という、どう考えても欠陥銃なのですが、これを使った最初の銃撃戦で、反動でボロボロに傷つきながらヘイトソングを連射するシーンは迫力抜群で、レッドの叫びと銃声が重なる様は正に"憎しみの歌"です。クライマックスではグレイの同僚である巡回牧師が色々な一芸持つヘイトソングを使っていたりと銃好きにはたまらなく面白い演出も。

 

…実はトイガン化されないかなぁ…と思っていたりしますが、「RED」自体がそんなに有名とは言えない作品だから、無理か。(笑)

 

そして、レッドの仇敵であるブルー小隊の面々もね、クセモノぞろいで良いのです。

キチ〇イ男の娘のグリーンウェル等、かなり時代を先取りしたキャラクターかと思いますし、ブルーの徹頭徹尾イカれちゃってるキャラクターも見事…それでいて、オーウェンやゴールドスミスなど、人としての弱さを持つ悪人になり切れないキャラクターもいて、ホントに魅力的なのです。

 

というか、群像劇であり復讐劇、敵方が個性的…という点で、やはり個人的に大好きな「無限の住人」に似た匂いがするんですよね、「RED」という作品は。結び方もちょっと似ている気がし。

 

余談ですが、本作のキャラクターにはモデルがいる事がコミックスで明かされているんですが、主人公のレッドのモデルはなんと、元SMAPの香取慎吾さんなんだそうで。

戦闘のプロ

  • 2023.06.10 Saturday
  • 23:51

作品としての優劣は一先ず置いておき、「マジンガーZ」より「グレートマジンガー」の人気ってのはやっぱり一段劣る気はします。所謂搭乗型ロボットアニメの祖ともいえる存在であり、それでいて昨今まで続くロボットアニメのプロセスをほぼ網羅した高い完成度を持った「マジンガーZ」…そんなマジンガーZが新たな強敵の出現によりボロボロになった所に颯爽と現れ敵を粉砕するグレートマジンガー…というこれ以上ないカッコイイ登場をしたのにも関わらず、です。まぁ、それがマジンガーZが大好きだった少年達の反感を少なからず買ってしまった印象も無くはないですが。

 

そんなグレートマジンガーのパイロットである剣鉄也もまた…イマイチ人気薄な気がします。何せ永井豪氏からも「(甲児に比べ)面白味がないキャラクター」みたいな事を言われたと聞きますし、「スパロボ」での扱いもシナリオや能力面で甲児君に比べると悪い印象。ウインキー時代は「第2次」ではグレートは出るのに鉄也は出してもらえず、「第3次」では只でさえスーパー系不遇なのに宇宙適応の悪さからグレートもマリアに奪われがち。それを受けてか「EX」では負傷したとかで合流時点でマリアにグレートを取られていたり。まぁ、「α外伝」では実質主人公みたいな形でフィーチャーされましたが、全体的に見れば主人公格のキャラクターとしては不遇な方かと。OVA版での参戦でも甲児が主軸ですし、「V」でカイザーエンペラーを得たもののそれより強力なマジンガーZEROのせいで霞んでしまう始末…。

 

そんな訳で、ネット上では「戦闘のプロw」呼ばわりされる事もある剣鉄也…でも、コッチの世界線の彼に触れればそんな馬鹿にした態度は取れまいて。

 

【トラウマ漫画】トラウマ必至の鬱漫画 105選 - ホビールーム

桜多吾作版「グレートマジンガー」より 剣鉄也

 

「冒険王」にて連載されていた桜多吾作(おうたごさく)氏版「マジンガー」シリーズ…アニメ版とはかなり毛色が違っている事でも知られております。「スパロボ」でもネタにされた量産型グレートも元をただせば本作からのネタですし、その作風も当時の日本の世相や社会情勢を取り込んだ容赦ない展開目白押し。「ガンダム」だ「エヴァ」だなんて言っている連中も腰を抜かすレベル…とんでもなくハードな作品なのです。コレが児童誌に載っていたとは思えない凄まじさなのです。

 

コチラの剣鉄也はアニメ版の様な落ち着いた印象はな薄く、年相応におちゃらけたりもする表情豊かなキャラクターになっており、そんな彼が有事の際に見せる徹底した"戦闘のプロ"としての一面、敵ならば女であろうと容赦なく顔面を撃ち抜き、自身の生存の為なら一般市民を容赦なく利用して見せ、自分達に敵対するならばミケーネでなくとも容赦はしないその非情さ…かなり苛烈なキャラクターとして描かれているのです。

 

そして彼の孤児である事から胸にい燻ぶり続ける劣等感、という奴もキョーレツに描かれます。パートナーのジュンにも混血から来るコンプレックスをネタにされてはいますが、鉄也がより苛烈な性格を与えられたせいか彼女の方はシリアスな描写は全体的には薄目で、ボス一歩手前なコメディリリーフ役になってしまっている程。そのせいか、本作の鉄也はジュンではなくこの娘。

 

みさとさん(分かる人には分る例のシーンの直前なので表情が引きつってます)

 

ポニーテールが似合う家事全般からヘリやグレートの操縦までこなす万能美少女ですが、実は彼女…ボスの親戚。アニメ版「マジンガー」の終盤のレギュラーキャラですが、アニメ版の「グレート」には登場しません。(笑)

桜多版では「マジンガー」から継続で登場。「マジンガー」では甲児君にセクハラされたりとお色気要因でしたが、本作では…。

 

ともあれ、彼の「孤児である劣等感」は最終局面で悲劇を生み、アニメとは違う結末を迎える形に。

それだけに留まらず、例えば正義の味方たる主人公が守るべき対象に石を投げられる姿は「ザンボット3」より先んじてますし、それがキッカケで主人公達がゲリラ戦を展開…ミケーネと戦う為に強盗まで働く作品は本作意外では見かけません。そんな正義の味方がそこまでの窮地に追い込まれる…というのがリアリティを持って展開されていく…リアルロボット路線の開祖は桜多版「グレート」なんじゃないかと思えるレベルですよ、ホントに。

 

このように、アニメの「グレートマジンガー」が大好きだ…という人にはオススメ出来ない作品ですが、一個の作品としては非常に完成度が高い作品なのです。桜多版「マジンガー」シリーズがアクションコミックスから復刻される際も「マジンガー」差し置いて最初にリリースされたのが「グレート」である事からも、本作の凄さはうかがえるのではないかと。「推しの子」の主題歌を「ネオゲッター」の主題歌に繋げた動画が話題になった関係で、石川賢版「ゲッター」を読んでハマった…という書き込みを何かで見ましたが、確かに石川版「ゲッター」はロボットコミックの傑作です。それに負けずとも劣らないのが、桜多版「マジンガー」…その中でも私が是非、騙されたと思って読んで欲しいと思うのが「グレートマジンガー」なのです。

人間は中身だと教えてくれる主人公

  • 2023.05.28 Sunday
  • 23:58

漫画やライトノベルの主人公設定でありがちな「容姿から不良だと勘違いされる」「目つきが悪く誤解されがち」…なんて奴。「はがない」の小鷹とか「とらドラ」の竜児、「宇崎ちゃん」のサクもそういう主人公かも知れません。しかし、この手の設定ほど信用できないものはないと思うのです。何故なら、挿絵とかで描かれる…直接我々が見る事が可能な彼らは普通に容姿が整っている事が殆どで、むしろイケメン…というパターンばかりだから。まぁ、漫画とかライトノベルの挿絵とかで、ブサイク設定だったりしないのであれきばわざわざ主人公を醜く描く必要はないってのは分かるんですが…だからといってイケメンに描いてしまうのでは「周囲に壁を作られるレベルの強面」という設定の説得力を殺してしまう事になる訳でね。そんなだからこの手の「強面設定」イケメン主人公を見る度に、内心「だったらそんな設定にしなきゃいいじゃねぇか」と思ってしまうのです。

 

でもね、そんな強面設定を持つ主人公の中で、設定に忠実だと思えるキャラクターが私の中では1人だけいるんですよ。

 

そんな彼の外見は…

極端なまでに黒目が小さく…

生来の色の白さは年中ある目の下の"くま"とともなって麻薬中毒患者のようであり…

マユも非常に薄く、寝ぐせのひどい髪はポマードでびっしりと固められているのである

つまり、こういう顔でした。

 

「エンジェル伝説」より 北野誠一郎

 

そう、彼です!!

「エンジェル伝説」の作者はアニメ化もしている「CREYMORE」の八木教広氏。確か赤塚賞入選の新人作家の連載デビュー作という事もあったのか、月間少年ジャンプでも異例と言えるレベルでかなり強くプッシュされていたのを思い出します。そのおかげか地味に今でも「好きだ」という人が多い作品かも知れません。

 

その中身は…

 

天使の様に純朴で澄み切った心とは裏腹に、悪魔の様な凶悪な容貌を持つ高校生・北野誠一郎。とある県にある碧空高校に転校してきた彼は本人の思いとは無関係にその恐ろしい容貌から誤解され、番長に祭り上げられて様々な「伝説」を作り出していく事に…

 

…という、作品です。

世間一般の強面主人公キャラクターの場合、自身が強面で周囲から避けられてしまう事にコンプレックスを抱えている…というのは定番ではありますが、「悪魔の様な天使の笑顔」な逆「ミッドナイトシャッフル」状態な容姿にも関わらず、北野君は全くすれた所のない…ひたすら純朴で真面目、心優しい人物なのです。

 

パッと見の印象ではどう見てもヤンキー漫画だと勘違いされがちな本作ですが、基本コメディというか、ギャグ漫画ですし何より北野君の性格もあって非常に読後感が良く、読み進めていくうちになんだか温かい気持ちというか…ほっこりした気分になってしまう不思議な作品。そういう意味ではヤンキー漫画とは対極と言えるかもしれません。

 

転向したててでいきなりその恐ろしい見た目からいきなり危険人物認定され、番長グループを倒しいつの間にか周囲から番長として扱われる様になってしまう北野君。その容姿から他校の不良に目をつけられるも、生来の運動神経の高さと反射神経の良さで返り討ち…といっても本人には喧嘩しているつもりすらないんですが、そんなこんなで意図せぬうちに数々の伝説を生み出してしまう訳ですが、そのギャップが実に面白い作品なのですよ。

 

そして、「エンジェル伝説」の良い部分は北野君にちゃんと理解者が現れる…という点。

最初の理解者は勿論ヒロインの小磯良子。家が古武術の道場という事で自身も腕っぷしが強い彼女は、本当は大して強くもないのに偉そうにしている…と不良に対し強い嫌悪感を持っており、持ち前の正義感も相まって時折人助けと称して質の悪い不良をボコボコにする事も。そんな彼女は北野君をも悪しき不良として狙い、決闘を申し込む訳ですが…そこで彼の"本質"に気が付くんですね。それ以来彼の最大の理解者となり、相思相愛に。良子は時として彼に貼られた最凶番長のレッテルを剥そうと行動したり、幾乃の件では北野君が女性と戦えない事を察して彼の代理として幾乃と対決したり…と北野君の為に様々な行動を。幾乃とは対決後に親友となり、彼女も北野君の理解者となりますが…「愛人の立場でいい」なんて発言をする彼女に良子の方は気が気ではなかったり…。(笑)

 

もう1人忘れてはならないのが竹久君。

中学時代から手の付けられない不良だった彼は、北野君が転校してきた時期に停学処分になっており、自分が不在の間に番格に収まった北野君に勝負を挑むも敵わないと判断し自ら舎弟になった男。奇しくもおかげで北野君にとっては碧空高校での最初の"友達"でもあるのですが、結局は誤解からの関係。北野君に従う理由は言わば忠誠心な訳です。

しかしある日竹久君は気づいてしまうのです。北野君が不良ではない事に。真面目に授業を受けるし、別段不良じみた態度や行動をとる訳でもない北野君…おかしいと感じる要素は確かにあった。でもそれ以上に北野君の「伝説」があり、その伝説には自らも関わったものもあった。しかし、決定的な形で「北野君は不良じゃない」という事を知ってしまった…苦悩、葛藤した竹久君ですが、結局一番肝心な事に気が付きます。北野君が

 

「俺にとって大切な友達であることに間違いはねーんだ」

 

と。

恐ろしい顔の北野君の印象に周囲が引きずられ、結果大騒動になってしまう…という構図は楽しいですし、意図せずいつの間にか「伝説」となってしまう北野君の行動も非常に面白い…勿論小磯良子との甘酸っぱいというか、至って健全なラブコメも見どころではあるんです。でも「エンジェル伝説」一番の見どころというのは、やっぱり少しずつではあるものの、北野君の本質を理解してくれる人達が増えていく…という部分であり、それが最大の魅力だと思うのです。

"いちご"といったら黒崎でも100%でもなく、梅川だよな

  • 2023.05.21 Sunday
  • 14:32

今回はコレ。

 

親子の物語としての【ICHIGO 二都物語】 | ピラケシ56

「ICHIGO 二都物語」より 梅川一期

 

「ICHIGO 二都物語」という作品はアニメ化もした(けど打ち切られた)レース漫画「F」の作者である六田登氏が「F」とほぼ同時期に連載していた戦後の昭和日本を舞台にした作品。

 

この作品の出会いはちょっと変わっていて…16〜17位だったかなぁ…当時、まだ"知る人ぞ知る名作"みたいな扱いだった「寄生獣」に思いっきりハマっていた私は、当時「こち亀」とか「ゴルゴ13」とかの研究本みたいなムックが話題になっていて、その中で似たような研究本として「寄生獣」を扱ったものがあったのです。その本に「寄生獣」と共通点が見られる小説や漫画、映画が紹介されていて、そこで強烈に興味をそそられたのが「ICHIGO」だった、と。

 

土建屋としてなりあがろうとする父親を持つ梅川一期は生まれてすぐ肺炎を患い、片肺を摘出した事で胸に大きな傷跡が。病気の事で父親から疎まれ弟は逆に期待される、胸の傷が原因で同級生にからかわれる日々を送った一期は自身が不完全な人間だという強いコンプレックスを抱く。そんな彼が出会ったのが転校生としてやってきた顔に大きな傷を持つ文也という少年。同じ傷を持ったものとして意気投合する2人だったが、ある日一期は文也の顔の傷が偽物である事を知ってしまい…という、のが冒頭の流れ。

 

…先にネタバレしてしまいますと、この梅川一期…連続殺人犯なのです。

幼い頃、顔の傷を本物としてやろうとして文也を殺害して以降、次々と人を殺めていく事になります。文也殺害から5年後にヒッチハイクの女性を殺し、一期こそが文也殺害の犯人だと睨み追っていた刑事の武村を殺害。一期を自身の歪んだ性癖のはけ口としていた体育教師も殺害し、ヤクザの岩井に利用される形でヤクザの殺し屋となる。しかし一期を扱いそぐね、彼に恐怖をも覚えるようになった岩井に裏切られ…と。

 

また、コンビニ版で「連続殺人犯の昭和史」なんて副題をつけられちゃった本作ですが、確かに一期の生涯と昭和史を引掛けたような描写は多々あったりします。一期が生まれた年はサンフランシスコ平和条約が締結された年であり、戦後の日本がスタートした年。一期が文也を殺めた時には背後で東京オリンピックの開会宣言がテレビから流れており、奇しくも一期の以降の殺人者としての生涯の開幕とも被ります。

 

岩井に見いだされ、一期は自身の殺人衝動に"一応の"意義…ある種の免罪符のようなものが与えられれば、世間では戦後日本の高度成長の証ともいえる大阪万博が盛況。そんな岩井に裏切られ見放された際には第一次オイルショック…。そしてバブル景気の乱痴気騒ぎの際に一期は自身の生涯の総括として、自身の為の都を作るとして岩井を殺害。一方、兄に対しての歪んだコンプレックスを内包したまま梅川建設のトップとなっていた一期の弟・利行もまた、実感を持てないからと一期の意思を継ぐかのような形で自身で造り上げた筈の"都"を爆破…その翌年、バブル景気がはじけ飛び、昭和という時代が終わる事に…。

 

昭和史におけるキーになる出来事が、一期…そして弟の利行の行動にリンクしていく作りがなんとも見事なのです。

 

いやね、エログロスな殺人をネタというか、スプラッタやゴアな描写ウリにした作品なんて今となってはいくらでもある訳ですが、殺人者側の心理描写から、なぜ人を殺すに至ったのか…その人格形成にまで踏み込み、丁寧に描いた作品というのは「ICHIGO」以外ではあんまりないんじゃないかな?と思うのです。特に最初の殺人…文也殺害に至る経緯というものは、それまでコミックス2巻に渡ってまで一期の心情…それこそ、何が面白いんだこんな展開、と思ってしまう様なものを丁寧に丁寧に構築したからこそ爆発したのだと思うのですよ。

 

それ故に、主人公がただ衝動的に人を殺す、ではなく人を殺めないと自身が生きている実感すら掴めない、という重々しい本作…一期の行動に対し読者は爽快感なんか得られません。あるのは強い嫌悪感とちょっとだけの同情心…でもそれが、キョーレツに物語に引きずり込んでくるのです。

 

そういえば「F」も、レースを題材にした漫画でありながら、主人公が妾の子であったりと親兄弟との確執的なものが強く描かれていて、更に…「F」を読んだ事がある人には分るであろう、ユキの顛末など、重い描写をぶち込んでくる作風でした。でも、六田氏のそういった部分を露骨に、ダイレクトに出しているのはやっぱり本作が一番なんじゃないかなぁ…と思うのです。

 

…でも、書籍として読むには中々にハードルが高い作品になっちゃったんだよなぁ、コレ。

勿論絶版本というのもありますが、古本屋とかでも中々見かけない作品ですし…通販とかでは漫画喫茶落ちとかのが全巻セットで出てますが、見てハマれるかどうかは読んでみないと分かりませんからねぇ…特にこの作品、人をかなり選びますから。

 

いや、電子書籍版もあるんです…あるんですが、表紙絵とかが当時の…作中のタッチと全然違っていて違和感あるんですよねぇ…。そもそもワタクシ、電子書籍はどうも味気なくて好かんのです。

無駄に脱ぎまくる作風

  • 2023.05.01 Monday
  • 23:42

今回はこの人。

 

「闇のイージス」&「暁のイージス」より 楯雁人

 

GWに入って特にこれといった用事もなく、基本ダラダラしている私は放置していた「LIVE A LIVE」をちょっとやっていたんですよ。「近未来篇」を終えて「功夫篇」をちょっとプレイしていたら…何だかたまらなく「闇のイージス」を読みたくなったのです。というのも、リメイク版ではほぼ無関係になってしまいましたが「功夫篇」のキャラクターデザインをしたのが何を隠そう藤原芳秀氏…そう、「闇のイージス」&「暁のイージス」(以降「イージス」シリーズと呼称)の作画担当の方なのです。

 

さて、「イージス」シリーズの原作担当は七月鏡一氏…皆川氏とタッグ組んだ「ARMS」とかが知られています。まぁ、「ARMS」にハマって同じ原作者だから…と「イージス」シリーズを読んでみたらガッカリ…という意見もネットでは見かけなくは無いです、ハイ。まぁ、そもそもネット上でも大々的に「イージス」シリーズを取り上げているところは少ない(昔はあったんですが)のですが、私が見つけた意見では守り屋としての仕事を受けるか否かを子供がなぞなぞを出して決める点とか、雁人の不殺に対しリアリティがないとの事。

 

まぁ、私的には金属生命体を体内に組み込まれた少年少女がサイボーグ兵士とか生み出してる軍産複合体をベースとした秘密結社と戦う…という方がリアリティがない話だと思うんですけどね、ええ。いや、「ARMS」も好きですけど、私は。

と、言いますか…SF的要素が強い「ARMS」に対し、本作の場合はハードボイルドアクション…ではあるんですが、実の所「同じ目的を持った男2人が表と裏に分かれている」という設定などは、むしろ「サンクチュアリ」とかに近い気がします。

 

この「イージス」シリーズは七月&藤原コンビの「JESUS」シリーズと世界観を共有して…というレベルではなく、「闇のイージス」の割と早い段階でジーザスが登場しており、「暁のイージス」中盤は彼がメインといっても過言ではない展開になったりしています。また、「イージス」シリーズの後日譚でもある「JESUS砂塵航路」にも雁人は出演しており、たかしげ宙氏原作の「死が2人を分かつまで」とは大規模なクロスオーバーを展開しているのも特徴。

 

そんな"護り屋イージス"こと楯雁人…彼は元SATの隊員だったが、テロリスト「蝶」のSAT狩りにより最愛の妻子と自らの右腕を失う。「蝶」への復讐の為に世界各国を流れ歩き、シチリアで出会ったルッソ・アルラッキから護り屋としての心得と中国拳法を叩き込まれた彼は日本に帰国。アナと共に「セイレーン」を開店、護り屋として活動を開始すると共に再開した義理の兄で警視庁公安部の甲斐彰一と互いを省みない共闘をする事に…というのが「イージス」シリーズの骨子です。

 

雁人の魅力…それは鋼鉄の義手で銃弾をはじき素手で敵を無力化するアクションシーンだったり、ハードボイルドな言動だったりもそうなのですが、一番の魅力というのは…完成されていない点ではないかと。護り屋として自らに課した"不殺"と、最愛の妻子を殺した「蝶」への復讐心の中で揺れ動く心情や苦悩…これこそが「イージス」シリーズの醍醐味かと。復讐者なのに不殺を貫こうとする彼の矛盾を、痛覚を失った殺し屋ゼロ、同じく「蝶」を標的にするジーザスといった存在と対峙させる事でそれを強調しているのです。

 

そんな悩める復讐者たる雁人が最後に出した答え…それが、リアリティがないとも言われてしまうアナのなぞなぞだ、というのがまた面白いのですよ。何故護り屋の相棒としてアナを選んだのか、そして何故護り屋として仕事を依頼するにあたってのルールがアナのなぞなぞなのか…これは、最後まで読んだ人にだけ分かるのですよ、ええ。

 

しかし…「JESUS」の「地獄に落ちても忘れるものですか」もそうですが…七月&藤原コンビの作品はラストシーンの結び方がね、良いんですよ、ウン。

 

しかし…「死が2人を分かつまで」とのクロスオーバーがもっと大規模に広まったら、日本でも「アベンジャーズ」みたいな漫画ヒーローの共闘ネタとかが流行ったのかも知れないよなぁ…と。

いん細の精神

  • 2023.03.25 Saturday
  • 20:50

少し前、中条きよし氏が国会質疑中に自身の新曲とディナーショーの宣伝をして顰蹙を買い、続けて年金未納問題で叩かれて…というのが話題になった訳ですが、中条さんと言えば三味線屋勇次…晴らせぬ恨みを晴らす仕事人な訳でね、基本的には反体制側のアウトローな訳です。そんな役がはまり役だった人ですから、野党とはいえ体制側の政治家になんかなっちゃったらそら、ね…と、当選して早々色々問題になった事が妙に納得だったりしたのです、ええ。

 

三味線屋勇次は「新必殺仕事人」から登場した"仕事人"…時代劇の「必殺」シリーズは1時代を築いただけあって様々なフォロワーが出ておりまして、ドラマや漫画、アニメ、ゲームと多岐に渡りますね。漫画では例えば「闇狩人」であったりアニメにもなっている「アカメが斬る」「トリアージX」であったり、「アクメツ」や「外道の歌」、「恨み屋本舗」であったり…そんな中に、忘れてはならないのが平松伸二さんの「ブラック・エンジェルス」です。今日はその中から、いつの間にか主役より目立つ立ち位置になってしまったこの人を紹介。

 

松田鏡二 に対する画像結果

「ブラック・エンジェルズ」その他より 松田鏡二

 

「ブラック・エンジェルズ」という作品は虐げられた弱者に変わって黒い天使"ブラックエンジェルズ"が法で裁けぬド外道を葬っていく…という「現代の必殺シリーズ」的な内容で、主人公は自転車のスポークを標的の急所に突き刺す雪藤…そう、松田ではありません。

 

松田は強い正義感を持つ刑事として登場しますが、彼を疎む上司の罠に嵌り警察を懲戒免職に。しかしすぐに雪藤の仲間になる訳ではなく、むしろその正義感から黒い天使としての彼の行為を私的制裁として忌み嫌っていました。しかしある事件がキッカケで法で裁けぬ悪への怒りが爆発し、外道を殺害…ブラックエンジェルズの一員となります。

 

ブラックエンジェルズとなった松田は空手をベースにした喧嘩殺法と圧倒的なタフネスさを持つ強靭な肉体を武器に、時にアメフトの防具の様なアーマーを着込んで活躍しますが、龍牙会との戦いの中、背後からマシンガンのヘッドショットを喰らい死亡。「必殺」転じて「世紀末救世主伝説」化してしまった第二部では刑事時代の同僚でドーベルマン刑事にクリソツな牙に霊体として力を貸し、最後は死んだ仲間達が待っていると言い残し消えてしまうのです。

 

…ただ、松田が本格的に活躍するのは実は「ブラック・エンジェルズ」連載後しばらく経ってから。

平松氏のもう一つの代表作「マーダーライセンス牙」とクロスオーバーした「マーダーライセンス牙&ブラック・エンジェルズ」…第二部で関東が壊滅してディストピア状態になっていた事などすっかり無かった事にされて開始したこの作品、「牙」の方がベースで「ブラック・エンジェルズ」はほぼ雪藤のみ…牙との付かず離れず表裏一体な関係や共闘を描いていたのですが…

 

物語中盤にて松田復活!!

 

関東壊滅どころか彼の死まで無かった事にされてしまったのです、そう「いんだよ細けぇ事は」の一言で!!(笑)

ちなみにこの台詞、ネット流行語大賞2009で4位になった「こまけぇことはいいんだよ!」の元ネタとする説もありますが、これには複数の説があるとかないとか。

 

何ともいい加減な形で待望の復活を果たした松田…雪藤が悪と戦っていた間…要は彼等に死んだと思われていた時に何をやっていたのか?という当然の疑問には世界各国を渡り歩いてバウンサーまがいの活動や地下格闘技の世界で糧を得ていた…という形にされ、一応額に銃創のような傷はあるので頭をマシンガンで撃たれた、というのは正史扱いの様ですが、復活後は完全に牙と雪藤を喰う勢いで大活躍で、彼にスポットが当てられるエピソードがかなり占める形に。復活後は元々のタフネスさには更に磨きがかかっており、牙や雪藤とは若干違う方向性で人間離れしております。そんな雪藤と戦う一幕もあったりするのも見どころ。

 

そんな松田…クライマックスでは首相官邸に突っ込んできたジャンボジェットをたった一人で、しかも生身で止めるというテリーマンも裸足で逃げ出すレベルの無茶を敢行し、ラスボスのトドメもちゃっかりさしてます。

 

しかし松田伝説はまだ終わりません。こんな作品までスタート。

 

ブラッグエンジェルズ 松田 に対する画像結果ザ・松田超人最強伝説 1

「ザ・松田 ブラックエンジェルズ」が全3巻、「ザ・松田 超人最強伝説」が全2巻

 

キャッチコピーは「いんだよ、細けぇことは」(笑)

 

この2本のスピンオフ、連載当時話題になっていた時事ネタをベースに、そこに松田が介入して無茶苦茶やって解決…という流れがパターン化しており、「ブラック・エンジェルズ」というより「外道坊」に近いかも知れません。

この作中で松田がやらかした事が、まぁ凄い!!

 

・銃弾を素手で叩き落す

・震災で折れ曲がった東京タワーの先端を直す

・蹴りで放射能をかき消す

・殺人ロボットやモンスターと大立ち回り

・戦車や戦闘機の大部隊を一蹴

・ミサイルに捕まって大気圏突破

・核ミサイルを蹴り落とし大気圏突入

 

ハッキリ言って、その無茶苦茶さはかつての黒い天使の仲間、そしてかつて愛した女である麗羅や彼女を巡る恋敵であった水鵬との戦いが霞むレベル。ノリと勢い優先の展開になってしまったのはなんだかなぁ…と思わなくもなかったり。

 

あ、ちなみに羽死夢も復活してましたが大して出番なしでした。

「スパロボUX」じゃあ本家モチーフの「必殺」差し置いて決め台詞が使われたのになぁ。(流石にちょっと変えてたけど/笑)

 

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雪の下北

  • 2023.01.07 Saturday
  • 23:59

いや〜、出張にパソコンは持って行ったんだけども電源アダプタ忘れちゃって何も出来ませんでしたわ。(苦笑)

そんな訳で今回は久々の「主人公列伝」…紹介するのはこの人。

 

映画「トラック野郎」シリーズより 星桃次郎

 

賄賂だなんだので終わった後の方が悪しき意味で盛り上がっている気がしないでもない東京五輪…この開会式の演出に使われ、海外でも一部で話題になったのがデコトラ…派手なペイントとギンギラに装飾されたトラックです。私がガキの頃なんかは高速道路とか大きな国道にいれば割と見かける事も多かったデコトラですが、今では様々な理由から見かけなくなってしまいました。

 

そんなデコトラを駆る個人トラック運転手を主人公に据えた映画が「トラック野郎」シリーズです。

名優・菅原文太さん演じる星桃次郎が愛車の「一番星」と、愛川欽也さん演じる相棒のやもめのジョナサンと共に日本全国廿浦浦を巡るロードムービーで、決まってクライマックスはパトカーを蹴散らしながらの派手なカーアクション…という娯楽映画でした。菅原さんが亡くなった際に、劇中同様仲良さそうに見える菅原さんと愛川さんが決して仲が良い訳ではなかった、なんて報道があったのには驚かされたものですわ。

 

元々クルマ好きなワタクシですから、「トラック野郎」シリーズは昔っからよく見ていて好きな映画なのは間違いないんですが…この映画をよく見ていた理由というのは、もっと別の所にあったりします。それは…劇中のヌードシーン…早い話、オッパイですわ。(笑)

 

私が小学生の頃は、今の若い子は分からないでしょうが土曜日も午前中は授業がある…言わば"半ドン"という奴だったんです。そうなると土曜の昼飯は家に帰ってから食べる事になる訳で、家ではチャーハンとか焼きそばとかを母が用意している訳です。

そして、当時の土曜日のテレビは日中に邦画や2時間サスペンスの再放送が多く、それで見て大好きになった作品とかも結構あるんです。「刑事物語」シリーズとかね。そういった邦画やサスペンスの中でも、この「トラック野郎」シリーズは昨年亡くなられた古谷一行さんが出ていた「混浴露天風呂殺人事件」シリーズと並ぶ、見ていても親に怒られたりチャンネルを取り上げられたりしない、貴重な"オッパイ枠"だったんですよ。

 

「トラック野郎」シリーズは脚本は毎度展開がお決まりのワンパターンなのですが、そんなワンパターンの中に必ず桃さんが行きつけのトルコ風呂(要はソープランドですわ)のシーンがあって、そこでは沢山の女性がオッパイさらけ出していたのです。

昨今ではテレビ局の自主規制とかがあって、そういう諸々が緩かった時代を懐かしむ声も良く聞く訳ですが…確かに今よりもヌードシーンみたいなものが当たり前に放送されていた時代ではあったのは間違いないんです。でも、子供にとってはそういうおおらかさを享受する訳にはいかない"事情"ってある訳です。そう、親の目、という奴ですわ。

 

友人知人の話を聞くと、ウチはそういうのは比較的緩い方だった様ではあるんです。それでも例えば「まいっちんぐマチ子先生」なんかは「こんなの見るな」とチャンネルを取り上げられたりはしましたし、そういう意味ではガキの頃の私のスケベ心を満たす、貴重な存在だったのは間違いないんです。

 

まぁそれはさておき…ホント、「トラック野郎」シリーズはワンパターンです。

日本各地を渡り歩く桃さんが仕事場に選んだ土地でマドンナに一目惚れ。不器用極まりないアプローチをして徐々に仲良くなり、その土地のボス格のライバルとドライブインで殴り合いトラックレースに発展。桃さんの恋は何だかんだで悲恋に終わり、悲しみに暮れている所に緊急の無茶な仕事が舞い込み、仲間が皆しり込みする中桃さんが名乗りを上げる。爆走する一番星はパトカーを次々とクラッシュさせ、トラック仲間の協力を得て仕事は成功…と、大体このパターンです。

 

一番星とパトカーのチェイスは結構派手にクラッシュして迫力があり面白いんですが…途中で挟まれる爆走で傷つき汚れていく一番星…という演出が、あからさまに木の枝で電飾を叩き割ったり、バケツで泥をぶっかけたり…と「もう少し見せ方考えてよ」と思えてしまうしょーもなさ。橋が過積載のせいで崩れたり、がけ崩れに巻き込まれたりするシーンもあからさまにミニチュアなので、昨今のCGが当たり前な映画を見慣れている人にとっては失笑ものかも知れません。

 

…でも、面白かったんですよ。流石にオッパイだけで「トラック野郎」シリーズが好きだと言っている訳ではありません。(笑)

桃さんは善人でもなければ正義の味方でもない…むしろアウトローでトドメに大変に下品。でも非情でも非道でも外道でもなく、女に弱く情に厚い好人物。そんな桃さんの暴れっぷりが実に痛快なのです。その暴れっぷりがあだとなり、警察からのクレームでシリーズ終了してしまったのですが。

ただ実際、この「トラック野郎」の放映以降、街でデコトラが多く見られるようになったと言いますし、「トラック野郎」が好きで、桃さんに憧れてトラックの運転手になったという人って結構いるんだそうです。

 

但し、東京五輪でネタにはされたもののデコトラの置かれた状況ってのは芳しくないんですけどね。残念ですが。

 

でも、「トラック野郎」シリーズに協力している哥麿会という組織は今でも存在…というか、「トラック野郎」の頃の同組織とは別物と言ってよい程変貌しているらしいんですが、全国でチャリティイベントを熱心に開いています。年末年始も確か川越で初日の出イベントやってたんじゃなかったかな?イベントでは塗料まで当時の際現に拘ってレストアされた一番星が目玉になっているんだそうで。見に行きたかったなぁ…。

 

哥麿会はチャリティイベントのみならずボランティア活動にも熱心で、全国に支部がある事を生かして災害時は警察や消防、自衛隊の次に被災者入りするのが哥麿会と言われる程。災害により通行止めしている道路でも哥麿会の活動を警察や自衛隊も知っているので通してくれるんだとか。

 

桃さんの心意気は、今もこういう形で受け継がれているんだなぁ…と。

OP、EDのベースとドラムがカッコイイ

  • 2022.06.01 Wednesday
  • 22:03

今回はコレ。

 

鋼鉄ジーグ に対する画像結果

鋼鉄ジーグ

 

父によって(無断で)サイボーグに改造された司馬宙が変身、合体し、邪魔大王国と戦う正義のヒーロー・鋼鉄ジーグです。

「鋼鉄ジーグ」…如何せん「マジンガー」「ゲッター」と比較すると知名度が低い…というのも、同じくダイナミックプロ系の作品ですし、アニメ制作も東映動画と共通ではあるのですが、「マジンガー」「ゲッター」がポピー(後にバンダイに吸収)なのに対し「鋼鉄ジーグ」はタカラ…おかげで東映動画がアニメを制作しているのに「東映まんがまつり」には作品として参加できず、両作品が放送終了後もバンダイからグッズが発売されたりゲームに登場したりとキャラクターとして確立されていったのに対し、「鋼鉄ジーグ」は"なつかしのテレビまんが"の1つに過ぎませんでした。

 

ただ最近は知名度に関しては改善されていまして、そのキッカケとなったのはやはり「第二次スーパーロボット大戦α」への電撃参戦でしょう。やはりタカラスポンサードの「勇者王ガオガイガー」と一緒に「鋼鉄ジーグ」が遂に「スパロボ」に参戦!!というのは、バンプレストの親玉であるバンダイのライバル企業の作品だから参戦は絶対に無理…と言われていたのでそりゃあ衝撃的だった訳です。

 

しかし…正直なところ、当時高い人気を得ていた「ガオガイガー」と比較すると、「鋼鉄ジーグ」参戦に沸いたのは一部のコアなファンだけだったかも知れません。ゲーム内でも初参戦なのでストーリーの軸の一つではあるものの、邪魔大王国ネタは中盤で決着がついてしまう形で、ユニットとしても一見ビッグシューターのサポートが必須な鋼鉄ジーグに合わせた様な小隊システムではあるんですが実はそこに罠があり、素の状態では空を飛べないジーグとビッグシューターの地形適応の相性が悪く、ジーグ自体も敵への打撃力と頑強さが求められるスーパー系でありながら、サイズSの都合で数字以上に攻撃力が伸び悩む有様。スーパー系としては異例の回避能力で雑魚殲滅に…としても、最大射程が短めで他にもっと優秀なユニットがいて見劣りが…という、愛が無くてはイマイチな性能だったのです。

 

但し、逆にネタとしてはかなりのインパクトを与えたのも事実です。

敵がハニワ幻人、どんなデカい相手でも粉砕するジーグブリーカーと、その際の「死ねえ!」…そしてアニメ本編譲りな破天荒な展開…奇異なものを見る視線だったかも知れませんが、話題になったのも事実。

 

何より、宙(=ジーグ)の声が「スパロボ」でもお馴染み、「ガンダム」のアムロ・レイと同じく古谷徹さんで、アムロが使いそうもない乱暴な台詞を吐きまくるのがウケ、スパロボやアニメのアムロの声を鋼鉄ジーグの台詞に挿げ替えた動画とかも作られている程。

 

…いや、ここで敢えて言ってしまう。実の所、「鋼鉄ジーグ」こそが「機動戦士ガンダム」のモチーフの一つなのだ!!

 

mmr なんだって に対する画像結果

 

先ず、鋼鉄ジーグの特徴と言えば、サイボーグ宙が頭部に変身しビッグシューターから射出されたパーツと合する「ビルドアップ」…そこで思い返して欲しいのが「機動戦士ガンダム」のテレビアニメ版の序盤。然程重要でもなさそうに見えるガンダムの空中換装が繰り返し行われ、あまつさえアムロはその訓練までやっている。コレは明らかにジーグのビルドアップを意識したものに他ならない!!

 

そして劇場版でその存在が抹消されたGアーマーの存在も忘れてはならない。ガンダムとGファイターが互いのパーツを組み替える事でGアーマー、Gスカイ、Gファイター、Gブル…といった形態になるというのも、鋼鉄ジーグにおけるスカイパーツやアースパーツ、マリンパーツといった追加兵装との組み合わせにより形態を変えるというギミックを模倣したものと考えられる。

それを決定づけるのがガンダムがザクレロ戦で見せたガンダムの上半身とGパーツを組み合わせたモビルアーマー形態の存在。ガンダムの上半身とサポートメカが合体するというこの形態と、鋼鉄ジーグの上半身がパーンサロイドと合体したジーグ・パーンサロイド…この符合は見逃せない!!

 

更に言えば、鋼鉄ジーグが腕パーツと交換して使用するジーグバズーカ…実はロボットアニメにおいてバズーカを武器としたのは鋼鉄ジーグが初だったりするのだが、「ガンダム」も武装の一つとしてハイパーバズーカがあり、アムロはビームライフルを差し置いて結構な頻度で愛用していたりする。そんなアムロが最終決戦で選んだ武装はガンダムの両手にバズーカを持たせるというもの…ビームライフルを差し置いてバズーカを選択したのは明らかな「鋼鉄ジーグ」へのリスペクトだ。

更に両手に同じ武装を持つ、というのは鋼鉄ジーグのマッハドリル形態をイメージしたものと考えて間違いない。方や突撃技、方や射撃武器で違うという人もいるだろうが、マッハドリルにはそれそのものを飛ばして敵を貫くマッハドリルシュートという技がある!!

 

他にも、マジンガーZは祖父、ゲッターは…言い方は悪いが赤の他人が作ったロボに主人公が乗って戦うが、鋼鉄ジーグは宙の父・遷次郎が作っている。これはガンダムの開発者がアムロの父、テム・レイである事にも通じるし、父親たるテム・レイが酸素欠乏症になってアムロと再会した際に滅茶苦茶な言動をしているのも、「鋼鉄ジーグ」における父・遷次郎の破天荒な性格に影響を受けたものだ。更に「ガンダム」の終盤では敵パイロットのララァとアムロがニュータイプ能力により分かり合う有名なシーンがあるが、「鋼鉄ジーグ」においても敵であるフローラ将軍と宙の邂逅が悲劇として描かれている!!

 

そう、この様に「機動戦士ガンダム」とは「鋼鉄ジーグ」なくして生まれえなかった作品なのだ!!

 

 

 

 

…いや、本気にしちゃ駄目よ!?(笑)

でもね、荒唐無稽ではあるもののハードでシリアスなドラマと、正に"ロボットプロレス"な力強いアクションシーン…絵自体はそりゃ今見れば古さは感じてしまいますが、コレは紛れもない傑作です。

 

でなきゃイタリアでこんな映画作られませんって。

 

皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ [Blu-ray]

敢えて時事ネタカテゴリにはしない

  • 2022.05.16 Monday
  • 20:47

またまた悲しい知らせが届きました。

 

「トレマーズ」フレッド・ウォードさん、79歳で死去 ヴァル役のケビン・ベーコンが追悼

 

何回かココでもネタにしていますが、私はフレッド・ウォードさんが出演していた「トレマーズ」という映画が大好きなのです。

映画をよく見るよ、という人なら何度見ても飽きない…大好きな作品ってあると思うんですが、私の場合、「コマンドー」と「バタリアン」、「刑事物語2りんごの詩」…そして「トレマーズ」なのです。

 

フレッド・ウォード に対する画像結果

手前がアール、奥がバル

 

「トレマーズ」というと、何といってもマイケル・グロスさん演じるサバイバリスト、バートを連想しがちですが、実は「1」では脇役、「2」では主人公の相棒であり、「3」から主役格に躍り出たキャラクターなのです。そして「1」の主人公はケビン・ベーコンさん演じるバルであり、フレッド・ウォードさん演じるアールがその相棒。そして「2」で主役となったのがアールだったのです。

 

若く無鉄砲な相棒ヴァルを豊富な経験から来る冷静さと機転で助けるのがアールというキャラクター。その結末はバルとロンダと結ばれる…というハリウッド映画らしいハッピーエンドでした。しかし「2」ではバルとロンダが成功した陰で、アールは半ば世捨て人の様な生活に。

 

というのも、最初は英雄としてもてはやされた彼だったがグラボイズ関連の事業では詐欺まがいなやり口をされてしまい、片田舎でダチョウの世話をして生計を立てる羽目に。フレッドさんの容貌が「1」の時よりかなり老け込んで見えるのがこの設定に凄くリアリティを与えていたんですよ。

メキシコ油田からのグラボイズ対峙依頼も「もう関わりたくない」と渋っていたものの、タクシー運転手で彼のファンだというグラディに説得され、「第2のチャンスに賭ける」と依頼を受ける…というのが「2」の導入部。

 

しかしやるとなったら「1」の時の経験や知識を総動員し、奥さんに捨てられ日がな戦争記録映画を観ていたバートを巻き込みグラボイズを次々と屠っていく訳ですが、「2」の目玉であるグラボイズの変態…シュリーカーの登場により窮地に…。ここからは映画を観て確認して欲しい所。

 

まぁ、軍用トラックに爆薬と食料、武器満載で駆け付けたバートの活躍にやや喰われてしまっている印象は無きにしも非ずではあるんですが、シュリーカー退治でも彼の「プラン」が生かされる展開にはなっていますし、何より今回は彼のラブロマンスが描かれており、やはり「トレマーズ2」の主役はアールだと素直に思える展開になっています。

 

しかし…アールがなぁ…残念としか言いようがないです。

何を隠そう、「1」の登場キャラクターで一番カッコイイポジションだと感じたのがアールなんですよね。主人公の年上の相棒で、走りがちなバルの諫め役、ストッパー的な言動が多いんですが、それでいて案外若いバルと一緒に無茶もやる…。

特に吹き替え版では事ある毎に「プランを練ろう」と打開策を話し合ったり、バルとのやりしりでつい興奮して汚い言葉を使った後、真顔でロンダに「下品で失礼」と言ったり…おっさんキャラクターながらチャーミングさがあるんですよ、アールは。

バルのロンダとの関係を後押しするお節介な一面も見せたり…ホント良いキャラクターだったんです。だからこそ、「2」の冒頭での全てに裏切られて諦めた姿というのも何となく"彼らしい"と思えてしまうというか。

 

この場を借りて、お悔やみ申し上げます。

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